黒色 ページ7
…秋の始まり。グルッペンとりっとは夕暮れの海に来ていた。といっても、特に用事があった訳ではなく、りっとが海の絵を描きたいからというものだった。
「…〜…♪」
さらさらと波が打ち付け、素足のりっとを行ったり来たりしている。手に抱えた画板に挟んだ紙には、淡い青色の絵具が白の上から色をつけている。
「…？どうしたの、グルッペン。」
「…いや…、何でもない。」
「…ふふ、」
絵を描いていたりっとをグルッペンは抱き締めていた。…波が彼を拐いそうだったから、なんて言える筈もなく。
こうしてグルッペンが甘えるのも、りっとだったからかもしれない。
「…なーに。らしくないじゃん。」
「…お前が、何処かに行かないか心配なんだ。」
「…行く訳ないでしょ〜…？俺の帰る場所は、グルッペンの隣…、だから。」
「…ああ…。」
記憶に薄らと蘇る、ベレー帽を被った青年の姿。何故、同じ事を言う？あの時お前はそう言って…翌日真っ赤に染まったまま、事切れていたじゃないか。
…もう、何処へも行かないで、は俺の我儘過ぎるか…。
「…大丈夫だってば…、ねぇ、グルッペン。」
「…悪い、変な事を言ったな…、」
「こっち見てよ。」
「…りっと、」
画板を下ろしたりっとと結んだ手を引っ張られて、一瞬だけ口を付けられる。…ああ、そうやってまた思い出させてしまうのか。ふわりと香る、シトラスの匂い。
スピネルの瞳は、ルビー色の眼を覗き込むように見つめている。
静かに風が、波を揺らす。
「…大丈夫だよ、俺は…居なくならない。…もう、二度と…。」
「…！お前…まさか…」
「…こうやって、巡り逢うのも、運命だと思わない…？ふふ、」
もう一度、繋がれた手を握り返すと、惹かれ合うようにキスをする。夕暮れに照らされたりっとの顔は、涙を浮かべて笑っているように見えた。
___いつか、何処かでそう笑い合った時のように。
『…貴方の側に、俺はずっと居ますよ…。』
『…軍に戻る気はないと？』
『戦わなくても…貴方を支える方法はありますから…。』
かつて“亡霊”と言われたスナイパーは、画家となり、一国の総統の心を掴んだという。彼は好きだったから、だろうか。
…命を狙ってきた観光客を、始末するべく死んだ。
『…ずっと、ずっとお慕いしております。』
「……大好きだよ、グルッペン。」
その姿が、切なくどこかの記憶と重なっていく。
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月音 - リク答えていただいてありがとうございます…めちゃくちゃ性癖に突き刺さりました…すこすこのすこです！これからも節鱈様のペースで更新頑張ってください。応援してます… (2020年12月3日 17時) (
レス) id: 718ff7c250 (このIDを非表示/違反報告)
節鱈(プロフ) - 月音さん» リクエストありがとうございます、そこまで言っていただけるとは…。光栄です。ご丁寧にシチュを書いて下さり、助かります。書くまで少しお時間かかりますが、気長に待って頂ければと思います。 (2020年11月25日 10時) (レス) id: bbdcbb2157 (このIDを非表示/違反報告)
月音 - 初コメ失礼します…簡潔に言うとめちゃくちゃすこです…橙色と赤色のを見て作者様の文に惚れ三作品全て見ました…どれも好きでした…リクしてもいいでしょうか？よろしければ学パロで花の世話している白色に鷺沢くんが花より白の方が可愛いと言うお話をお願い致します… (2020年11月24日 21時) (レス) id: 718ff7c250 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：節鱈 | 作成日時：2020年10月30日 11時
