空に好きを綴るあなたへ【青×黒】 (ページ5)

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(渡辺side)

…やらかした。

目黒にAと呼ばれた彼女は、確かに俺の初恋の子だった。

もしかしたら俺のことを覚えてくれているのかもと期待しながら話しかけたのに、

彼女は俺を少しも覚えていなかったみたい。

そしたらなんか急に、

全部、どうでも良くなっちゃって。

今までの俺に戻っちゃって、言い慣れた“可愛い“をあの子に向けた。

普通女の子は俺に可愛いなんて言われたら
顔を赤くして俺を見るのに

明らかに、は？って顔されて、
引いた目で俺を見て、

やってしまったと気づく

でもそれと同時に

他の奴とは違う

やっぱり俺の知ってるあの子なんだ、って
どこか喜んでしまう

その後に目黒の手を引いて出ていった彼女の後ろ姿が

記憶と重なって

苦しくなって。

目黒はあの子の大切な人なのだろうか。
あの子の中にもう俺はいないのかな。

女子「ねー翔太くんってば！」

二の腕あたりの服を引っ張られて我に返る。

女子「どうした？あの子のこと気になる？」

渡辺「ん？…んーん、ちょっと可愛かったなーって」

女子「何それチャラーw」

俺だけがあの夏に取り残されたようで悔しかった

いつの間にか俺の周りには顔目当ての女子が集まっていて、
数人陽キャっぽい奴らもついてきて

こいつらがうるさくしてくれてるおかげで
無駄なことを考えなくていい気がした。

なのに、、

「いい？とりあえず周りの子に声掛ける！話を合わせる！満を持して、友達になりましょーだよ？」

目黒「…俺にはAだけでいいのに。」

「そうもいかないでしょ！」

あの二人が教室に入ってきて
慌てて腕に絡みついている女子を離した。
…何やってんだろ、俺。

美咲「Aー！」

「あ！美咲ー！待ってー！
じゃあ行くから、友達作るんだよ？」

走り去ってく彼女

A、、っていうんだ、

懐かしい、あの感覚が蘇る。

近づきたい。

名前を呼びたい。

話がしたい。

思い出して欲しい。

………でも、真っ黒な俺を知ったら、
彼女はどう思うのか。