”家族を探すために”【MHA×ワンピース】 (ページ10)

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職場体験当日。
コスチュームを持って蛙吹さんについていく。ちなみに名前の漢字はさっき聞いた。

行くのはセルキーというヒーローの事務所。海で海賊を取り締まっているという。
……海賊だった自分が海賊を取り締まるとか。
面白いなァ、と思った。

「見て、千弦ちゃん。海よ」
「…………海」

電車を降りて指定された場所まで歩く。

海だ。
今世初の、海。

潮の匂いがする。
波の音が聞こえる。

……なんだろう、ただの海なのにすごい感動している自分が居る。
それもそうか…？１５年も海から離れてたんだもんなァ…………。

「チヅル？」
「……あ、何？」

ぼけーっと海やら家族やらの事を考えていたら、いつの間にか目の前にセーラー服っぽい服を着た人が立っていた。
……やべ、話聞いてなかった。

「今日の予定！聞いてた？」
「…………いや……海に感動しててちょっと」
「へぇ、海は初めて？」
「はじめて…じゃあ、ないけど。懐かしいなァって」
「そっか。海は陸と違って足場が揺れるからね、酔わないように。……それから、今日は船員の紹介と船の紹介兼掃除、それからパトロール！私は監督役のシリウス！よろしくね！！」
「……よ、よろしくおねがいします…」

ぐいぐい顔を近づけられながら言われた。
これちょっと怒られてる気がする。

主に話すのはさっき言われた通り、監督役のシリウス。
この船の船長はセルキーという人らしい。見た目アザラシのその人の能力は「ゴマフアザラシ」だとか。能力者なのに海を泳げるという衝撃。この世界じゃ当たり前だけど。

甲板掃除やら洗濯やら、まあ懐かしいなと思う雑用をてきぱきこなす数日。
惜しいのは木造でないことと、帆船ではないということ。機械と鉄でできた最近の船だ。他人の船だし、悪いとは言わないが。

潮風に吹かれて波の音を聞いて、甲板掃除。
ビンクスの酒を鼻歌で唄っていると世話係のシリウスさんがドリンクを持ってやってきた。

「毎日訓練や船の掃除ばかりで退屈でしょ？」
「ええ、少し」
「私が職場体験した時もおんなじ。子供の頃に思い描いていたヒーロー像と現実のギャップに戸惑ってたわ」

もっと華やかなものを想像していたらしい。
ただまあ、そりゃ船の上ならやることと言ったら訓練と掃除洗濯くらいだろうという話で。…ああそうか、ヒーローだからパトロールも入るのか。

ま、船の上だし、代わり映えのない日々なことに変わりはないだろうが。