”家族を探すために”【MHA×ワンピース】 (ページ30)

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…さっきとは、違う意味で、心臓が、跳ねた。

「あれ、なんだマルコも知らねェの？お前会った人のこと忘れたことねェのに」
「いや知らないんじゃねェ、顔自体は見たことあるよい。今年の雄英体育祭１年の部で優勝した子だろい？」
「…あー！確かにそうだな！……いや有名人じゃねェかよ。そんな子がウチのパイナップルに何か？」
「……何か言ったかい？」
「いやんやめてマルコさんおれのリーゼントがくずれちゃうっ！！」
「………………ぃ……ゃ、」
「…？悪い、人違いとかならもう行っていいかい？」
「んあ、そうだなァ。や、急いでるわけじゃないけどな、こいつのカノジョの誕生日が―――」
「オヤジはともかくエースまで―――」
「――――――」
「―――」

耳鳴りがひどかった。

どうやってあのモールから出たのかを、全く覚えていない。

それどころか、マルコ達をどう振り切ってきたのかも。

　

気づいたら、買った物を手に持って、家のドアノブを握っていた。

ふと実感が湧いた。

　

「…そっか」

今までやってきたの、全部無駄になったのか。

家族を探すために、と入った雄英は今日この日に居る意味がなくなった。

家族は居ない。

いや、この世界に存在してはいる。
彼らはオヤジと言ってた。エースとも言ってた。彼らの家族は存在するんだろう。

ただ、その中に、チヅルという存在が無いだけで。

彼らの記憶の中に。

チヅルという人間は居ないだけ。

考えられなかったわけじゃないだろう。

テレビで報道されたのに何も無かった時点で少しこの可能性を考えておくべきだった。

「……はは…」

……時々。

最悪、マルコ達が自分の事を忘れていたとしても。

幸せそうならそれでいいなとか考えてたけど、

いざ現実として受け止めてみれば全くそんな事ないな。

ただひたすら、キツいだけだ。

「…夜白？」

無音だった世界に、突然音が入ってきた。

自分に近づいてくる足音と、学校でよく聞いている声が。

「……………………ぁいざわせんせ……？」
「なぜここに居…………いや、何かあったか」
「……んで、ここに、」
「あー、そりゃ……俺の部屋がそこだからとしか言えないが」

ス、と自分の部屋の奥の方を指さした。

…………あァそうか、どっかで「相澤」見たことあるなって思ってたのは隣だったからか。

そうだな、雄英に近いから…合理的、だよな。