逃亡 ページ15
Aside
涙も止まってきて、ようやく頭の中がすっきりしてきた頃。
今の現状に、自分でもわかるくらいに顔から血の気が引いていくのがわかった。
えっと、ここ(屋敷の薔薇園)で泣いてたら志麻様に見つかって、なぜか抱きしめられて泣いていいよって言われて、それでめっちゃ泣いちゃって………。
そんでようやく落ち着いてきて今に至るわけなのですが、え、この状況かなり、いや結構ヤバいのでは???
……志麻様には申し訳ないけど、逃げよう。
でも、この人力強いんですよねー、これどうやって志麻様から抜け出そう。
とりあえず、隙をついて逃げるか。
私は素早く頭を回転し、この後どうするか考えたあと、志麻様の背中にそっと腕を回し、その背中を指で軽くつついた。
びっくりしたのか、一瞬、志麻様が私を抱きしめていた腕の力を緩める。
志麻様、ごめんなさい。
心の中で私も一瞬謝罪して、志麻様とは反対方向に身を翻した。
し「…あっ、ちょっ、待ちぃや!」
私は必死に、足を動かした。
無駄な力は入れずに、軽やかに、前だけ見てしっかり走る。
力は志麻様に、っていうか他の3人にも負けるけど、俊敏さなら負けない。
反射神経もそこそこ良い方だし(※この人の言う「そこそこは」一般人が使う「そこそこ」の意味とは程度が大きく違います)
後ろから追ってくる足音がしたけど、やがて聞こえなくなった。
諦めてくれた………?
ちらっと片目で後方を確認する。
志麻様の姿は、もう見えなかった。
どうやら上手く撒けたらしい。
ほっと息をついて、屋敷の外堀に背中をつく。
いつも男装しててパンツスタイルだから、女の時の姿でしか着ないワンピースは走りにくかったなぁ。
なんて考えながら、裏の方から自分の部屋にこっそり戻った。
どこか安堵しながらベッドに入る。
……あれ?なんでこんなに落ち着いてるんだ、私。
さっきまで泣いてたはずだったけど……まぁ、身体の水分半分以上持ってかれる前に、涙腺が危機を感じ取ったんだろうな、うん。
そういうことにしとこ。
……断じて、志麻様が女の私に優しくしてくださったから、とかではない、………多分。
―――――――――――――
志麻side
彼女が、俺から逃げる直前、長い黒髪がなびいて、彼女の匂いがした。
その匂いに驚いて、逃げだす彼女に対する反応が遅れる。
ああ、しまった。
彼女から香った匂い、それは、今日俺がチェスで負かされた奴の、嗅ぎなれた匂いだった。
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kne(プロフ) - 続き楽しみです。 (2021年9月14日 0時) (レス) id: ee34aec55d (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - リスさん» リスさんなんですね!私はこたぬですが基本的に箱推しです (2021年7月4日 12時) (レス) id: 79c7e82e9a (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - ぱるむさん» お返事が遅くなってしまい申し訳ありません汗 ありがとうございます! 今リメイク版を作成している最中なので、もうしばらくお待ちいただけると嬉しいです (2021年7月4日 12時) (レス) id: 79c7e82e9a (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - ランデブーさん» ありがとうございます!そう言ってもらえてとても嬉しいです (2021年7月4日 12時) (レス) id: 79c7e82e9a (このIDを非表示/違反報告)
リス - 私も志麻リスです! (2021年6月24日 22時) (レス) id: 016461b9aa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:よる | 作成日時:2020年7月30日 16時