TIME.59 ページ10
｢…パパ｣
｢駄目だからな｣
僕の目の前には美味しそうな料理が並んでいる､しかし忌まわしい料理が僕の目の前でホクホクと湯気をたてて食卓に並んでいる｡
｢僕これ嫌い｣
｢好き嫌いは駄目だぞ､牡蠣はビタミンCやたんぱく質が沢山含まれているんだ｡それに､他所で出されたらどうする｣
目の前は牡蠣のバター焼きが鎮座している｡バターの香ばしい匂いが僕の鼻を擽り食欲をそそるが相手は忌まわしき牡蠣､僕の脳が牡蠣を体内に取り込む事を拒絶している｡
｢牡蠣食中毒起こすじゃん…｣
｢これは加熱してるから一応大丈夫｣
｢でもこれ生食用ではなかった?｣
パパは絶対に加熱用は使わない､何か理由があるみたいだがそれは僕が知ったこっちゃない｡
｢加熱用より生食用の方がマシだろう｣
｢…どゆこと?｣
加熱用より生食用の方がマシってどういうことよ?
とりあえず箸の先っちょで牡蠣を突っついてみる､突っついても牡蠣がどうにかなる訳でもない…パパが作ったのだから美味しいのだろうがそれでも僕の身体が拒絶をしている｡
｢いいから食べなさい､何時まで経っても片付かないだろう｣
｢…んー｣
食べたくない…残したい｡海のミルクとか人は言うけど何処をどう見て海のミルクと呼ぶんだろう?口に含めば鼻を突き抜けるような独特な臭さとグニュグニュした気持ち悪い間食じゃないか､ミルク要素全くない!
｢んー｣
ﾊﾟｸｯ…ｺﾞｸﾝｯ
｢おえっ…｣
｢コラッお前今噛まずに丸飲みしたな!｣
だって長く舌に長く触れたくないもん!口の中で噛んでもないのに牡蠣の風味が口一杯に広がる…気持ち悪い｡
｢だって嫌いなんだもん｣
｢嫌いだからって丸飲みする馬鹿いないだろ!丸飲みは消化に悪いし喉に詰まらせたらどうするつもりだ｣
この後も長々と説教された｡温かいご飯が少し冷め始めた時漸く解放された､残したい…だけどそれはパパが許してくれない(残したら許さんぞ)という威圧が凄い｡
｢僕風見さんの気持ちわかったよ…｣
｢ちゃんと食べれば怒らないしそれに今は風見は関係ない｣
しょうがないから息を止めあまり舌が牡蠣に触らないようにして食べるようにした､パパの目が怖いけど全く食べないよりはマシだと思うよ｡
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作者名：イズミ | 作成日時：2018年9月12日 19時
