差し伸べた手に。 ページ48
「っごめん、」そう焦ったように増渕くんは走り去って行った。
『増渕くん、！』
思わず追いかけそうになった足を止めた。
──── ダメだここで追いかけちゃ、また元通りだ。
あの大嫌いな私に、戻ってしまう。
「…行けよ」
『、え？』
「ちゃんと自分の気持ち、確かめて来い」
『市橋くん、』
「…さすがに俺も、辛い ────」
こんなに苦しそうな市橋くんの顔を初めて見た。
そんな顔をさせてるのは ────私。
彼を支えるってそう決めたのに、結局私は何の役にも立ってすらいない。
その現実があまりにも苦しくて逃げるように病室を飛び出した。
──── 泣いちゃ、ダメだ。
私に泣く権利なんてない。
そんなもの…ないのに。
こぼれ落ちる涙を必死に堪えようとする。
足の震えが、止まらない。
立っていられなくて思わず人気のない廊下にしゃがみこんだ。
「っ、Aちゃん！」
声を掛けられて顔を上げると増渕くんが松葉杖なのに懸命に走っている姿。
何でこんな時に、追いかけてくるの。
『何で、』
「走って行くの、見えたから」
「ごめん俺のせいで」そう言うと増渕くんはそっと私に手を差し伸べた。
初めてその手に、触れられなかった────。
増渕くんの手は力なく落ちていく。
『増渕くんのせいなんかじゃ、ないよ』
「──── Aちゃんのこと、好きだよ」
『っ、え？』
「…でも、蓮子のことがどうしても」
──── 忘れられない。
分かってる、分かってるよそんなの。
蓮子と増渕くんは結ばれるべきなんだ。
蓮子の真っ直ぐな思いは、報われるべきなんだ。
「狡いよね、俺」
『…私だって、狡いよ』
増渕くんを忘れられない。
でも市橋くんを、失いたく、ない。
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狛犬のリサ(プロフ) - あーあ、やっぱり夢主はトビオじゃなくて市橋かぁ…けっ…作者は最高でドラマも最高だったし…トビオ落ちだったらもっともーっと最高だったのになぁ (2019年1月22日 2時) (
レス) id: 3d96b1b6a9 (このIDを非表示/違反報告)
みい - いつも楽しみにしてます！トビオおち分岐ありがとうございます！トビオと結ばれて欲しいと思ってたので嬉しいです (2017年9月27日 16時) (レス) id: 788e2e4591 (このIDを非表示/違反報告)
はる坊(プロフ) - この前はトビオオチが見たい！とコメントさせていただきましたが、正直私もどっちも見たいです。どちらも書いてくださるというお話すごく嬉しいです！！頑張ってください！！ (2017年9月2日 22時) (レス) id: 0e6de27daf (このIDを非表示/違反報告)
前田ちかね(プロフ) - 市橋くんオチがいいです！ (2017年9月2日 22時) (レス) id: f96c4eb485 (このIDを非表示/違反報告)
emu(プロフ) - 今日の回は昼顔っぽくて面白かったです！めっちゃ好きですこの感じの＞ω＜ (2017年9月2日 1時) (レス) id: 7e03b267ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐伯
| 作成日時：2017年8月8日 18時
