大好きな時間 ページ38
「またトビオと遊ぶ約束したんだ」
「まあカラオケだけどね」
「良かったね結局何でもなくて、Aもちゃんと戻って来たし」
「本当だよ！めちゃめちゃ心配したんだから！」
『ごめんね心配掛けて』
「もう勝手にいなくならないでよー？」由佳はそう言って私に抱きついて来た。
蓮子もそれに合わせてまた私たちを抱き締める。
────久しぶりに感じた、" 楽しい " っていう感情。
そうだ、私忘れかけてた。
私はこの時間が何よりも好きだった。
蓮子と由佳と過ごすこの時間が。
だから私は、増渕くんへの気持ちを必死に隠した。
────今を壊すのが、怖かったから。
「次あたりトビオから告られたりして」
「うわーそれあるかも！蓮子、心配させて悪かった。俺と付き合ってくれー！」
「もうやめてよ！ないないない！違う違う、そんなんじゃない！」
もう、失いたくない。
だから私は、隠し通さなきゃいけない。
増渕くんへの気持ちを。
────起きた、現実を。
「…A？どうかした？」
『へ、！？いやちょっと、ぼーっとしてただけ！』
「もう、しっかりしてよねー！」
これで、いいんだ。
これでいつもの日常が戻って来る。
多少変わったことはあっても、いくらでも戻せるから。
私さえ、私さえ隠し通せば。
全部上手くいくんだ。
「あ、あれ」
────、正樹くん。
そんな声に反応して視線を向けると、見覚えのある二人と、赤いTシャツ姿。
「行こう」
「そうだね」
厄介な表情を浮かべた由佳はここから去ろうとする。それに合わせて、蓮子も。
あれは、本当に正樹くんだったんだろうか。
未だに受け止めきれない現実は私を波のように呑もうとしている。
それにずっと、気付かないフリをしていた。
気付いてしまったら最後、もうきっと、私は立てなくなる。
「A？行くよ？」
────これで全部、終わらせよう。
いつまでも現実から目を背ける自分を。
そんな自分に振り回されるこの気持ちも。
闇の中を必死に手探りで何かを探し続ける、私の恋心も。
『ごめん、先行ってて』
「え、ちょっと！A！」そんな私を止める声に謝りながら、全速力で走り出した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 807人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
狛犬のリサ(プロフ) - あーあ、やっぱり夢主はトビオじゃなくて市橋かぁ…けっ…作者は最高でドラマも最高だったし…トビオ落ちだったらもっともーっと最高だったのになぁ (2019年1月22日 2時) (
レス) id: 3d96b1b6a9 (このIDを非表示/違反報告)
みい - いつも楽しみにしてます！トビオおち分岐ありがとうございます！トビオと結ばれて欲しいと思ってたので嬉しいです (2017年9月27日 16時) (レス) id: 788e2e4591 (このIDを非表示/違反報告)
はる坊(プロフ) - この前はトビオオチが見たい！とコメントさせていただきましたが、正直私もどっちも見たいです。どちらも書いてくださるというお話すごく嬉しいです！！頑張ってください！！ (2017年9月2日 22時) (レス) id: 0e6de27daf (このIDを非表示/違反報告)
前田ちかね(プロフ) - 市橋くんオチがいいです！ (2017年9月2日 22時) (レス) id: f96c4eb485 (このIDを非表示/違反報告)
emu(プロフ) - 今日の回は昼顔っぽくて面白かったです！めっちゃ好きですこの感じの＞ω＜ (2017年9月2日 1時) (レス) id: 7e03b267ff (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：佐伯
| 作成日時：2017年8月8日 18時
