何も出来ない私 ページ46
やっぱり見なかったことには出来なかった。
私の気持ちがどうだとか、そんなことは今はどうでもいい。
ただ私は、増渕くんを助けないといけない。
市橋くんをこれ以上苦しめたくない。
そのために復讐なんてさせてはいけない。
その一心で走り出した。
市橋くんの姿はもうない。
心当たりもないから、とにかく探すしかない。
息を荒らしながら走り続けると歩道橋の上に真っ赤なシャツを覗かせた学ランが目に入った。
( 正樹くん、だ！ )
何度も転びそうになりながら階段を駆け上るとちょうど目の前で正樹くんが増渕くんを殴った。
ヒュっと喉に息がつまる。
あまりの驚きに声も出ないまま。
倒れ込んだ増渕くんと、ふと目が合った。
私の姿を見て目を見開くと軽く口が開く。
( 助けなきゃ、)
私が一歩を踏み出そうとした時、それを遮るように目の前に何かが現れた。
『市橋、くん』
どうしよう、このままじゃ増渕くんが捕まってしまう。
市橋くんは私の声にも反応せず、一度も目を合わせなかった。
きっと怒っているんだろう。そりゃ怒るよね。自分の復讐を邪魔しようとするなんて、普通ならもう死んでてもおかしくないくらいだ。
増渕くんに逃げてと伝えようと顔を上げてみたけれど、彼は倒れ込んだまま動ける様子もない。
包帯だらけだった手もいつの間にか元に戻っていて、車椅子を動かしてゆっくりと増渕くんに近づいていく。
増渕くんのことを一度も見ずに近付いていたのに、いきなり車椅子の方向を変えた。
ビクッと体を揺らす増渕くんと一緒に私の体も震える。
『っだ、め…やめ、て』
「Aちゃん、悪いけど、ここだけは俺らも譲れない」
私の儚い願いも正樹くんのその一言で跡形もなく砕け散ってしまった。
心が痛くなるほどに、残酷に。
「…死んで償え」
ああ。
やっぱり私は、何も出来なかった。
〜 ３話 ｅｎｄ 〜
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もくもく(プロフ) - はぁぁぁ、、だいすきです。。。市橋くん、、 (2019年6月25日 19時) (
レス) id: 10c5a3095c (このIDを非表示/違反報告)
狛犬のリサ(プロフ) - 素晴らしい小説なんですけど、夢主を見ていくとだんだんトビオの事人として好きで恋愛対象ではないと思ってしまいますねこの回は (2019年1月22日 2時) (レス) id: 3d96b1b6a9 (このIDを非表示/違反報告)
佐伯(プロフ) - 優羽さん» コメントありがとうございます！本当に嬉しいです！（；_；）続編に移行することになりましたので是非ご覧下さい！！ (2017年8月8日 18時) (レス) id: b9ebf906a3 (このIDを非表示/違反報告)
佐伯(プロフ) - あかねこっこさん» コメントありがとうございます！嬉しいです（；_；）今日４話放送ですね！また更新するのでぜひ楽しみにして頂ければ！！ (2017年8月8日 18時) (レス) id: b9ebf906a3 (このIDを非表示/違反報告)
優羽(プロフ) - 初めまして。更新されると毎日読んでます。続きが読みたいです。更新待ってます。 (2017年8月7日 11時) (レス) id: e3622875d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐伯
| 作成日時：2017年7月24日 0時
