市橋くんの優しさが、苦しい ページ45
「おい市橋くん、あいつ…」
市橋くんの隣にいた人が顔を上げた。
私もその声につられて上を見ると、窓からこちらを覗き込んでいる増渕くんの姿。
きっとさっきの私の大きな声を不思議に思って外を見たのかもしれない。
市橋くんに完全にバレてしまった、ここに増渕くんがいることを。
増渕くんにも気付かれてしまった、市橋くんが生きていることを。
「ああ、連れて来い」
『っ逃げて増渕くん！』
私のその声を聞いた増渕くんはそのまま窓から姿を消した。
彼がいなくなった窓を見つめるけれど、すぐ目の前から鋭い視線を感じる。
( なんてことしちゃったんだろう )
その視線の主は分かっている。
ただその目に込められた怒りと向き合うのが、怖くて仕方ない。
また膝がガクガクと震えだした。
「…どういうつもりだ」
彼のそばにいた二人はいつの間にかいなくなっていて、きっと増渕くんを探しに行ったんだろう。
いつもの何倍も低い市橋くんの声に手が震えだした。
怖い…怖い、怖い。
どれだけ私の前での市橋くんが優しかったからって、完全に調子に乗っていた。
市橋くんは矢波高のトップだ。みんなから恐れられる、そんな存在。
…分かっていたつもりなのに。
『…増渕くんは、犯人じゃないです』
「あ？」
『か、彼は！そんなことする人じゃ』
「…好きな奴だからか」
『、へ？』
何で、何で市橋くんがそれを？
彼ほどの立場なら調べようと思えば調べられるんだろうけど、今の私にそんなことを考えるほどの余裕なんてない。
「もし俺があいつの立場でも、同じこと言ってたか？」
『そ、れは…』
そうだ、と。そうだ、と言いたいのに。
恐怖からか口が動いてくれない。喉から声が出てくれない。
そんな私の姿を無視して市橋くんは車椅子を翻した。
少しずつ、背中が小さくなっていく。
『っ待って！』
必死に声を絞り出した。
きっと私はこのままだと後悔する。
増渕くんを助けられなかったことも。
市橋くんを止められなかったことも。
「…お前は、来るな」
『、え』
彼なりの優しさなんだろう。
私に増渕くんを苦しめる姿を見せたくないって、きっとそういう。
こんな時まで私はどれだけ自惚れているんだろう。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿今はただ、彼の優しさが、苦しい。
ただ小さくなる市橋くんの姿を見つめて立ち尽くすことしか出来ない。
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もくもく(プロフ) - はぁぁぁ、、だいすきです。。。市橋くん、、 (2019年6月25日 19時) (
レス) id: 10c5a3095c (このIDを非表示/違反報告)
狛犬のリサ(プロフ) - 素晴らしい小説なんですけど、夢主を見ていくとだんだんトビオの事人として好きで恋愛対象ではないと思ってしまいますねこの回は (2019年1月22日 2時) (レス) id: 3d96b1b6a9 (このIDを非表示/違反報告)
佐伯(プロフ) - 優羽さん» コメントありがとうございます！本当に嬉しいです！（；_；）続編に移行することになりましたので是非ご覧下さい！！ (2017年8月8日 18時) (レス) id: b9ebf906a3 (このIDを非表示/違反報告)
佐伯(プロフ) - あかねこっこさん» コメントありがとうございます！嬉しいです（；_；）今日４話放送ですね！また更新するのでぜひ楽しみにして頂ければ！！ (2017年8月8日 18時) (レス) id: b9ebf906a3 (このIDを非表示/違反報告)
優羽(プロフ) - 初めまして。更新されると毎日読んでます。続きが読みたいです。更新待ってます。 (2017年8月7日 11時) (レス) id: e3622875d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐伯
| 作成日時：2017年7月24日 0時
