作業室で ページ18
[ ここって、]
WZ「俺の使ってる作業室」
[ すごい!テレビでしか見たことないですこんなの!」
滅多に出来ない外出だからかやたらとテンションが高かった彼女は、作業室に入った途端より興奮し始めた。
…もし病室にいないことがバレたらどうするんだろう。
完璧に俺のせいだ、今さら思っても遅いけれど。
目を輝かせながらウロウロする彼女を横目に、スピーカーのスイッチを入れた。
大きな音が作業室に響くけれど、もちろん彼女は、気付いてすらいない。
後ろから彼女の肩を叩くと慌てて振り向いた。
WZ「ここ、触ってみて」
スピーカーを指差すと彼女は驚いたように俺の顔を見た。
話すことが出来ない代わりに、彼女の表情は本当に豊かでまっすぐと伝わってくる。
恐る恐る、彼女の白くて細い指がスピーカーに触れる。
[ すごいです!揺れてます!」
WZ「分かる?」
ブンブンと激しく頭を上下に揺らす。
WZ「これが音楽だよ」
耳が振動で音を伝えているのなら、手からだって分かるはずだと思った。
嬉しそうに微笑む彼女に胸が温かくなる。
音楽は声が全てじゃない、リズムや振動だってその中の一つで。
それが彼女に伝わった、それだけで妙に嬉しくなった。
[ これもジフンさんの曲ですか? ]
WZ「うん、そうだよ」
[ やっぱり!通りで素敵な曲だと思いました ]
単純に、疑問があった。
どうして最後の願いが音楽を聞きたい、なのかって。普通もっとやりたいことだってあるはずだ。
バンジージャンプをしたり貯金を使い切るとか、最後の場所を決める、とか。
嬉しそうに自分の手を見つめる彼女に、そっと問いかけた。
WZ「…なんで、音楽を聞きたいの?」
[ ……私の、憧れの人がね音楽で人生が変わったって言ってたから ]
WZ「っ、そっか」
その人がミンジュンさんなのか、誰なのか、俺には分からないけど。
感じる心の虚無感に、俺は気付かないふりをした。
521人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「SEVENTEEN」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
koro39(プロフ) - 続きが読みたいです..! (2022年2月22日 19時) (レス) @page22 id: 3d70232f0d (このIDを非表示/違反報告)
麗 - 久しぶりにこのお話を読みに来たら完結となっていてとても驚きました。もうおしまいなのでしょうか?このお話楽しみにしていたので、、、、 (2019年6月30日 14時) (レス) id: 8656a872ff (このIDを非表示/違反報告)
佐伯(プロフ) - なむさん» コメントありがとうございます!そうなんですね( ; ; )そう言っていただけで嬉しいかぎりです!もし失礼なことがあればすみません( ; ; )これからも更新頑張りますのでよろしくお願いします!! (2019年2月1日 18時) (レス) id: 68bb58c651 (このIDを非表示/違反報告)
佐伯(プロフ) - なんかよく分かんないけど新しい感じの女さん» コメントありがとうございます!嬉しいお言葉…( ; ; )これからも頑張りますので、よろしくお願いします! (2019年2月1日 18時) (レス) id: 68bb58c651 (このIDを非表示/違反報告)
なむ - わたし耳聞こえないんですけど、なんか凄く親近感が湧いて更新が楽しみです! (2019年1月28日 1時) (レス) id: 4983707158 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:佐伯 | 作成日時:2019年1月25日 19時