グレイ _ ｇｒａｙ__ (ページ2)

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２匹の虎ページ2

そんな私も生まれ育った街は山王街。

お母さんはまだかなり小さかった頃に病気で死んでしまってお父さんとお兄ちゃんと暮らしていた。

お父さんは医者として街に唯一ある病院を営んでいて家に帰ってくることも少なかった。
だから私のお父さんの記憶は、お母さんの葬式で涙も流さずにただ棺桶を見つめる姿が一番古いもの。

お兄ちゃんはそんなお父さんのことをずっと恨んでいた。医者なのに、なんで一番近くにいる人の病気に気付かなかったんだと口癖のように、毎晩お父さんを責めるようになった。
でも私にはとても優しくて、学校にも行かずに私のことをきちんと育ててくれた。

「A、？何ボーッとしてんの」

『へ？あーちょっとね昔のこと思い出してた』

ナオミはそうかと軽く笑って店にある写真を見つめた。そこには悲しくなるくらい笑っている男たちが肩を組み合っている。
…もう見ることは出来ないけれど。

「おいナオミ！腹減った、何か食うもの！」

勢いよく開いた扉からゾロゾロと流れ込んでくるみんな。それぞれ笑い声をあげながら楽しそうにしている姿に思わず嬉しくなった。
ふとコブラと目が合うとフッと微笑んでくれた気がした。

「うっせーよハゲ！その前にツケ払えや！」

「っな、それは、今度な今度！」

「っざけんなよこの」

２匹の虎が希望の王冠を支えている。
今はその希望は見えないかもしれない。
でもその虎が望むかぎり、きっと、また希望は輝くはず。