第57話 ページ8
「え？気にすることないよ。」
突然礼を言われ、明日人は少し驚いていた。
そんな明日人に、Aが近づき彼と目線を合わせた。
「稲森くん。…私からもお礼を言うわ。ありがとう。」
そして、そっと彼の耳元に口を近づけるとこう言った。
「貴方だけは助けてあげる。でも、奴らは知らないよ」
その言葉に、明日人は思わず彼女の顔を凝視した。しかし彼女は、いつもと変わらない穏やかな笑を浮かべているだけだった。
「…どういう意味？」
彼の問いに、彼女は表情を変えないまま、「すぐに分かるよ」とだけ答えた。
・
その後、灰崎とヒロトの必殺技で1点を取り、イナズマジャパンは見事に第二試合を突破した。
「…充」
1人グラウンドを後にした一星を待っていたのは、蘇芳色の少女だった。彼を見つめる彼女の顔からは、普段の笑が消えている。
「ごめん、私何も出来なかった…。
でも、ちゃんと仇は取ってあげるから。」
彼女はそう言うと、どこに隠していたのか小さなケースを取り出しにっこりと笑った。
そんな彼女を見て、一星は顔をしかめる。彼は、彼女のその表情が嫌いだった。昔、まだ純粋にサッカーを楽しんでいた頃出会った彼女の、嘘で塗り固められたその笑顔が嫌いだった。
「俺がやる。」
一星は彼女の手からケースを奪い取ると、険しい顔で彼女を見つめた。
「お前、絶対手出しするなよ。少しでも俺に思うとこがあるなら、何もしないって約束してくれ。」
その表情を見て、Aは何も言えなかった。いや言わなかった。今の彼に何を言っても無駄だと悟ったからだ。
「うん、じゃあお願いね。良い報告待ってるわ」
Aは再びにっこりと笑い、一星に背を向けた。
「…やめてくれ、その顔。俺はお前の苦しむ姿を見たくないんだ。」
遠ざかる彼女の背を見つめながら青い少年が発した言葉は、誰にも拾われることなく闇に飲み込まれていった。
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エル(プロフ) - 名無しのりんごさん» わあ、ありがとうございます！そう言ってもらえると励みになります^_^更新頑張りますのでこれからも宜しくお願いします！ (2019年12月23日 17時) (
レス) id: 399e3550ff (このIDを非表示/違反報告)
名無しのりんご - 面白いですね。綺麗な表現がたくさんあって素敵です。頑張ってください！ (2019年12月23日 1時) (レス) id: 694c2bbe46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ニーナ | 作成日時：2019年11月16日 12時
