第97話 ページ48
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Aと別れた野坂が廊下を歩いていると、先の方に見覚えのある人物を発見した。彼は立ち止まりその人物を見つめていたが、意を決した様にその人物の元へと近付いた。
「やあ、一星くん。」
ずっと野坂を睨み付けていた少年は、彼の飄々とした態度が気に入らないのか露骨に無視をすると、彼の横を通り過ぎようとした。
「…君、愛されてるね。あんな良い子そうそういないよ。」
野坂のその言葉に、その少年が勢い良く振り返った。そして、驚いた表情で彼に詰め寄った。
「お前…、Aに何かしたのか！？」
そんな少年の顔を見て、野坂は少し悪戯がしたくなった。先程まで真剣な話をしていたにも関わらず、何故だかからかいたい衝動に駆られた。
「さあ、どうだろうね？…でも、やっぱり可愛いねAちゃん。嫌がってる顔なんて尚更。」
その瞬間、野坂の顔に拳が振り下ろされた。野坂は、間一髪のところでその拳を止めた。先程の少女と同じくらいの身長なのに思いの外力が強く、野坂は少し驚いていた。
「ごめんごめん、嘘だよ。何もしてないよ。ただ、少し話していただけさ。」
そんな驚きを感じさせることのない、淡々とした口調でそう言った野坂を、少年はより鋭い目で睨み付けた。
「そんなの、今更信じられるか！」
怒りを露わにする青い少年に、野坂は何故だか悲しい気持ちになった。きっと、この少年はあの蘇芳色の少女が好きなのだ。しかし、この先永遠に彼女の側にいることは出来ない。何せ、彼はもうこの世にいないのだから＿。
「…なら、彼女の所に行ってみなよ。僕を殴るのはそれからでも遅くないだろう？だからほら、早く行ってあげなよ。」
先程までの戯けた様子から一変し、急に真剣な表情でそう言ってくる野坂に、一星は戸惑いを隠せなかった。しかし、とにかく少女の様子を見に行くのが先だと思ったのだろう。彼は野坂に背を向けると、彼女の部屋へと走って行った。
「…悲しいね、君たちは。」
一星の後ろ姿を見ながら、野坂は小さくそう漏らした。
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エル(プロフ) - 名無しのりんごさん» わあ、ありがとうございます！そう言ってもらえると励みになります^_^更新頑張りますのでこれからも宜しくお願いします！ (2019年12月23日 17時) (
レス) id: 399e3550ff (このIDを非表示/違反報告)
名無しのりんご - 面白いですね。綺麗な表現がたくさんあって素敵です。頑張ってください！ (2019年12月23日 1時) (レス) id: 694c2bbe46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ニーナ | 作成日時：2019年11月16日 12時
