第96話 ページ47
固い決意に満ちた凛々しい野坂の表情を暫く見つめていたAは、やがてゆっくりと彼から自分の膝へと視線を落とした。
「…そうだね、それが出来たらどんなに良いか。でも、そう上手くはいかないんだよ。ここで私がオリオンを裏切れば、奴等は充に危害を加える。それだけは絶対に許せない。だから私は、最後まで演技を続けるわ。」
どの道、逃げ場など無いのだ。不安定な状態の彼を1人にすることは出来ない。彼が1人で立てる日が来るまで、側を離れることは出来ない。
「ありがとう、歩み寄ってくれて嬉しかった。でも、ごめんなさい。」
私は、貴方たちの力にはなれない。たった一人の、大切な家族を守ることだけで精一杯なの＿。
「良いんだ、私はあの子が救われるなら何もいらない。…だから、私の事は放っといて。」
そう、何もいらない。昔はあんなに欲していた居場所すらも、もういらない。
「その代わり、あの子の居場所は残してあげて欲しい。優しい貴方達への、最後のお願いだわ。」
私が居なくなっても、彼らならきっとあの子を包み込んでくれるはずだ。散々酷いことをしたのに、助けようとしてくれていたのだから。そんな彼らの元でなら、あの子も強く生きれるはずだ。
「さ、話はもう終わり。明日は早いんだ。病み上がりなんだし、早く寝た方が良いよ？」
蘇芳色の儚い少女は、ゆっくりとベッドから腰を浮かした。ドアの方に向かっていく彼女を、野坂が引き止めた。
「今すぐ答えをくれとは言わないよ。だから、もう少し考えて欲しい。君の本当の望みを聞かせて欲しい。どちらにしても、決めるのは君だよ。」
野坂は真剣な表情で彼女を見つめると、そう言った。そして、「お休み」と微笑み、彼女の部屋を後にした。
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エル(プロフ) - 名無しのりんごさん» わあ、ありがとうございます！そう言ってもらえると励みになります^_^更新頑張りますのでこれからも宜しくお願いします！ (2019年12月23日 17時) (
レス) id: 399e3550ff (このIDを非表示/違反報告)
名無しのりんご - 面白いですね。綺麗な表現がたくさんあって素敵です。頑張ってください！ (2019年12月23日 1時) (レス) id: 694c2bbe46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ニーナ | 作成日時：2019年11月16日 12時
