第92話 ページ43
「それで、本題は何？」
Aは、一瞬とはいえ彼に恐怖心を抱いたことを悟られぬ様、笑顔を貼り付けたまま淡々と問いかける。
「ああ…。お察しの通りだよ。」
そう答えた野坂の顔からは、先程までの笑みが消えていた。彼の真っ直ぐな瞳に捕らえられた蘇芳色の少女は、表情が崩れぬ様必死になりながら更に聞き返す。
「さて、一体何のことかしら？私は貴方にお話を頂ける覚えは無いんだけどなぁ…。」
自分の頬に指を当て、首を傾げて戯けた調子でそう述べた少女を、野坂はしばらく見つめていた。そして、突然ふっと微笑むと、椅子から腰を上げ再び彼女との距離を縮めた。
「君って本当、人を煽るのが上手いよね。…でもさ、自分の立場分かってる？」
野坂は彼女の細い肩に手を置くと、ゆっくりと顔を近付けた。
「触らないで。」
Aは鋭い声でそう言うと、ドンっと野坂の胸板を押しその場に立ち上がった。そんな彼女の顔からは先程までの笑みが消え、険しい表情で野坂を睨みつけていた。
「ふふっ。やっと化けの皮が剥がれたね。」
彼女の顔を見て、野坂は勝ち誇った様な笑みを浮かべた。Aは一瞬、しまったという顔をして彼から目を逸らしたが、小さく舌打ちをすると再び彼を睨み付けた。
「…で、何だよ一体。私本当に心当たり無いんだけど。」
諦めたのか、急に刺々しい態度へと変わったAを見て、野坂は再び小さく笑ったが、やがて真剣な表情へと戻りこう言った。
「一星くんのことだよ。君は彼の事情を全て知っていたんだね？」
疑問形ではあるが、それは自分に答えて欲しくて発した言葉では無い。
Aは何も答えず、しばらく野坂を睨み付けていたが、やがて小さくため息をつくとこう言った。
「だったら何か？そんなこと、貴方には関係ないだろ？私と彼は貴方たちの敵。私から話すことは何も無い。」
彼を部屋に入れたのは失敗だった。もしかしたら上手く言いくるめられるかもしれないと思っていたが、やはり彼はそこまで甘くなかった。
Aはギリッと歯を食いしばり、数分前の自分を呪った。
「君って結構分かりやすいんだね。そんなんで、今まで良くやってこれたよね。」
Aは、やや呆れた様にそう言ってくる野坂を露骨に無視すると、彼を部屋から追い出そうとドアの方に向かおうとした。しかし、そんな彼女の前に彼が立ちはだかる。
「まあ、そう怒らないでよ。…お願いだ、話をしよう。僕らはきっと分かり合えるよ。」
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エル(プロフ) - 名無しのりんごさん» わあ、ありがとうございます！そう言ってもらえると励みになります^_^更新頑張りますのでこれからも宜しくお願いします！ (2019年12月23日 17時) (
レス) id: 399e3550ff (このIDを非表示/違反報告)
名無しのりんご - 面白いですね。綺麗な表現がたくさんあって素敵です。頑張ってください！ (2019年12月23日 1時) (レス) id: 694c2bbe46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ニーナ | 作成日時：2019年11月16日 12時
