第87話 ページ38
「それは違います！」
勢いよくそう言ったのは坂野上である。彼は意思の強そうな瞳で真っ直ぐヒロトを見つめると、更に続けた。
「新妻さんは、僕らを傷付けようとはしてませんよ。確かに、オリオン財団と繋がってるのは事実だと思います。でもあの人、オーストラリア戦で僕が怪我する前、忠告してくれてたんです。足元には気を付けろって。」
それを聞いた一同は、誰もが驚きの表情を見せた。
「それに新妻さん、あの試合で何回も鬼道さんのこと見てました。その時のあの人の顔、とても悲しそうで…。何か、無理して笑ってる気がしたんです。」
坂野上の脳裏に、その時の光景が浮かび上がる。彼は、彼女が物騒な発言をしてからずっと彼女を観察していた。彼女は終始笑顔だったが、時折下を向いたかと思うと、どこか悲しそうな笑みで鬼道を見つめていた。
「これは僕の想像ですけど、本当は新妻さん、鬼道さんに助けて欲しかったんだと思います。きっとあの人にも何かしら事情があって、自分だけではどうしようも無いから、優秀な鬼道さんに助けを求めたんじゃ無いでしょうか…。」
「でも鬼道は怒っていたから、新妻の話を聞けなかった。…そういうことか？」
坂野上の話を聞いていた風丸が、確認するかの様に彼に問いかけた。そんな彼に坂野上は、「あくまで予想ですけど」と言いながら微かに頷いた。
「だったらさ、一星と新妻を何とかして救おうよ！オリオンの奴らの手から。」
明日人がそう言うと、坂野上も賛同の意を示した。
「確かに、事情が分かれば打つ手は有りそうだね。だけど、肝心なのは一星くんと新妻さん自身の心を救えるかどうか。」
そう言った野坂に、明日人がキョトンとした顔で「どういうこと？」と尋ねた。そんな彼に、野坂は真剣な面持ちで言葉を続ける。
「僕が見たところ、彼らは仕方なくやってる様には見えなかった。彼らは、自分がやっていることに耐えられず、自分自身を悪人だと偽って生きているのかもしれない。」
「だったら尚更、俺たちの力で一星と新妻を助けよう！」
力強くそう言った明日に、円堂が同調する。
「それでこそチームだ。よし、皆で一星と新妻を助けるぞ！」
「だけど、僕らが気付いたことを組織に悟られれば、敵は一星くんと新妻さんをターゲットにするかもしれない。」
不安を煽る発言をした野坂に、明日人が困った様に眉を八の字にした。
「じゃあ、どうすれば良いんだよ？」
「僕に考えがある。」
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エル(プロフ) - 名無しのりんごさん» わあ、ありがとうございます！そう言ってもらえると励みになります^_^更新頑張りますのでこれからも宜しくお願いします！ (2019年12月23日 17時) (
レス) id: 399e3550ff (このIDを非表示/違反報告)
名無しのりんご - 面白いですね。綺麗な表現がたくさんあって素敵です。頑張ってください！ (2019年12月23日 1時) (レス) id: 694c2bbe46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ニーナ | 作成日時：2019年11月16日 12時
