第83話 ページ34
野坂が建物の外に出ると、見覚えのある少女が1人、壁に寄りかかり横目でこちらを見ていた。その少女は穏やかな微笑みを浮かべると、彼に手を振った。
野坂は少々怪訝そうな顔をしたが、ゆっくりとその少女の方に近づいた。
「お疲れ様。今日は見事だったね。病み上がりだとはとても思えないわ。」
少女はにっこりと笑い、野坂にそう言った。それに答えるかのように、野坂は「ありがとう」と笑った。そして、しばらく彼女の顔を見つめると、やや低い声でこう言った。
「それで、君は僕に言いたい事がある様だけど？」
彼の顔からは笑みが消えており、その口調はどこか刺々しかった。しかし、鬼道の様にはっきりとした敵意は感じられず、彼が何を考えているのか察するのは難しかった。
嫌だな、とAは思った。この男から、感情が読み取れない。感情が読み取れない人物は危険だ。出来る事なら、この男を上手く使いたかったが、操られるほど彼は単純じゃない。
Aは自分を落ち着かせるかの様に小さく深呼吸すると、不敵な笑みを浮かべ彼との距離を縮めた。
「貴方が私の可愛い後輩をいじめてたみたいだから、釘を打っとこうかと思ってね。…あまり私を見くびらない方が良いよ。私は貴方と同類。目的の為なら手段を選ばないの。どんな汚い手を使ってでも、邪魔者は容赦なく排除するわ。」
野坂は、自分よりも一回り背の低い少女の物騒な発言を真剣な表情で聞いていた。そして、自分に背を向けた少女にひとこと声を掛けた。
「君は辛そうだね。」
その言葉に反応したのか、少女の細い肩が一瞬ぴくりと動いた。しかし、彼女は振り向く事なく、その場から姿を消したのであった。
「…なるほどね。」
野坂が小さくそう漏らしたと同時に、彼の背後から西蔭の声が聞こえた。野坂は彼の方に向き直ると、「行こうか」と微笑み、その場を後にした。
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エル(プロフ) - 名無しのりんごさん» わあ、ありがとうございます！そう言ってもらえると励みになります^_^更新頑張りますのでこれからも宜しくお願いします！ (2019年12月23日 17時) (
レス) id: 399e3550ff (このIDを非表示/違反報告)
名無しのりんご - 面白いですね。綺麗な表現がたくさんあって素敵です。頑張ってください！ (2019年12月23日 1時) (レス) id: 694c2bbe46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ニーナ | 作成日時：2019年11月16日 12時
