第77話 ページ28
・
「野坂さんとフィールドに立った以上、ゴールは決めさせない。野坂さん、俺の力を見て下さい！」
ゴール前に立ち、気合を入れてそう言った西蔭に、野坂は軽く微笑んだ。
試合開始のホイッスルと共に、ウズベキスタンが日本の縄張りへと攻め込んでくる。
それを見た野坂は、咄嗟に指示を出した。
「岩戸くん、風丸さん！
左右に分かれるポジショニング！」
彼の指示を受け、2人が左右へと別れる。
「ほう。左右を分厚くしたのか。それならば正面突破と行かせてもらおう！」
ダストがそう言い、正面へと突っ込んでいく。それを見たAは、薄らと口角を上げた。
「…馬鹿ね。左右に固めたって、正面が私となればガラ空きも同然だわ。」
彼女がそう言ったとき、野坂が回り込みダストからボールを奪い取った。
「なっ！？」
驚いたのはダストだけでは無い。Aも、表情を取り繕うことを忘れて彼の方を凝視した。
「野獣の扱いに慣れてるよ。」
そんな野坂を見た明日人は、喜びに満ちた声で彼の名前を呼んだ。
「さあ、反撃するよ！中盤、不動さん、氷浦くん、明日人くん、一星くんは防塞陣形を取って中央突破を測る！」
野坂の指示に、一星はふっと笑うと、彼の指示に逆らい違う方向へと走り出した。野坂はそんな彼を横目に見ると、王者のタクトを繰り出した。
「何！？」
自分の意思とは関係なく、彼の指示に従っていた一星は驚きの声を上げた。
「司令塔のいるチームは、これ程変わるのか。」
その様子を見ていた風丸が、感嘆の声を漏らす。そんな彼の横で、蘇芳色の少女が呆然と野坂を見ていた。その顔からは普段の笑顔が消えており、心の底から驚いている様な、そんな感情を読み取ることが出来た。
「…あの人、すごい。」
思わず漏れてしまった声に、彼女は慌てて口に手を当てる。そして探る様に風丸の方に目をやると、彼と目が合った。Aはギョッとして彼から目を逸らす。そんな彼女の名前を、風丸が呼んだ。
「…新妻。俺はお前の考えてること、全く理解できないけど、今のお前が俺たちの負けを祈ってる様には見えない。」
Aは暫く彼と見つめ合っていたが、目を逸らし下を向くと、再び薄らと笑みを浮かべた。
「…一体何のことですか？」
そう言う彼女は、風丸が気味悪いと感じているいつも通りの新妻Aだった。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 31人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
エル(プロフ) - 名無しのりんごさん» わあ、ありがとうございます！そう言ってもらえると励みになります^_^更新頑張りますのでこれからも宜しくお願いします！ (2019年12月23日 17時) (
レス) id: 399e3550ff (このIDを非表示/違反報告)
名無しのりんご - 面白いですね。綺麗な表現がたくさんあって素敵です。頑張ってください！ (2019年12月23日 1時) (レス) id: 694c2bbe46 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ニーナ | 作成日時：2019年11月16日 12時
