第70話 ページ21
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一方その頃、倉庫の裏で鬼道と西蔭が何やら話をしていた。
「一星と新妻のこと、調べはついたか？」
「はい。あいつらが組織と繋がっていることは間違いありません。ですが、引っかかる事があるんです。時々合宿所を抜け出して、どこかに消えてるみたいで。」
「…組織と接触しているのか？」
「わざわざ抜け出さなくても、連絡手段はいくらでもあります。なぜそんな怪しまれることを…？それに、偶然ではあるんですが新妻が妙なことを口走ってたのを聞いたことがあるんです。」
「妙なこと？」
「…はい。確か、"あそこには誰も居ないのに"みたいな感じだったと思います。」
西蔭は、その時の様子を思い出しながらそう答えた。数日前、トレーニング後部屋に戻ろうとしていると、誰もいない厨房でぼんやりと佇んでいる彼女を見かけた。その時の彼女の表情は何とも悲しそうで、諦めたような笑みを浮かべてそう言っていた。
「…分かった。あいつらの行動、俺が追いかけてみよう。」
考えるように顎に手を当てていた鬼道は、顔を上げると決心したようにそう言った。そんな鬼道に、西蔭が問いかける。
「鬼道さんは、戻って来ないんですか？」
「まだ代表には戻れない。となれば、俺は俺のやれることをやろう。」
鬼道は一瞬舌を向いたが、すぐに前を向くと、意志の強そうな声でそう言った。
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その日の夜、Aは自室の窓を開け、ぼんやりと星を眺めていた。彼女は星が好きだった。昔から、嫌な事があると必ず星を眺め、心を落ち着かせていた。
「…ああ、もう嫌だ。…誰か助けて。」
窓の縁に視線を落とし、彼女は今にも泣き出しそうな声でそう言った。彼女の脳裏には、豪炎寺や坂野上、そして鬼道の顔が次々に浮かんで消えていく。
覚悟は決めても、自分の心の悲鳴を無視することは出来ない。仕方がないと、どうしようもないと、何処かで諦めているのは事実だが、それでももう少しやり方があったはずだと後悔に苛まれる。
「…ごめんなさい。私、無力なの。…どうか私を許さないで。あの子が救われる日まで、私は嘘をつき続ける。可愛いあの子を見放すなんて、私には出来ない。」
その言葉は、誰に向けられた言葉なのだろうか。彼女は一体、何を守ろうとしているのだろうか。きっとそれは、神すらも知らない、彼女のみが知ることなのだろう。
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エル(プロフ) - 名無しのりんごさん» わあ、ありがとうございます！そう言ってもらえると励みになります^_^更新頑張りますのでこれからも宜しくお願いします！ (2019年12月23日 17時) (
レス) id: 399e3550ff (このIDを非表示/違反報告)
名無しのりんご - 面白いですね。綺麗な表現がたくさんあって素敵です。頑張ってください！ (2019年12月23日 1時) (レス) id: 694c2bbe46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ニーナ | 作成日時：2019年11月16日 12時
