第52話 ページ3
ボールを蹴って走る坂野上の前に、ルシが再び立ち塞がった。ルシは気怠そうに「またお前…」と言うと、スパイクから刃物を出し坂野上の方へと走り出した。
すると坂野上はルシに向かってボールを蹴り付け、刃物にボールが刺さったルシは身動きが取れなくなった。
そんな彼を見て、坂野上は勝ち誇った顔で笑った。
「仕上げはこれだ！…氷の矢!!」
氷の矢を受けて、ルシの刃物がポキリと折れた。刃物と一緒にルシの心も折れたのだろう。彼は力なくその場に崩れ落ちた。
「坂野上、お前いつの間に氷の矢を？」
自分の必殺技を使った坂野上に、氷浦は驚きの表情でそう問いかけた。
「とことん練習したんです！氷浦さんのがかっこいいから、俺も使いたいなーって！」
「それで、出来る様になるのか？」
元気に「はい！！」と答えた坂野上を見て、氷浦は驚きと感心のこもったこえで「すごいね」と言った。
雰囲気の悪かったフィールドを和ませる彼らのやり取りを見ていたAは、ふっと顔を綻ばせた。安心したような表情を浮かべた彼女の方に、坂野上が近寄ってきた。
「新妻さん！俺、大丈夫です！
あれくらいじゃ折れませんから！」
明るくそう言った彼を見て、Aは胸の奥が熱くなっていくのを感じた。
この子は、私を信じてくれたのだ。
そのことが嬉しくて、同時に申し訳なくて、彼女はいつの間にか無機質な笑を顔に貼り付けていた。
「うん、すごいわ坂野上くん。」
いつも通りの人形の様な笑顔を貼り付けて、自分の心に蓋をした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 31人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
エル(プロフ) - 名無しのりんごさん» わあ、ありがとうございます！そう言ってもらえると励みになります^_^更新頑張りますのでこれからも宜しくお願いします！ (2019年12月23日 17時) (
レス) id: 399e3550ff (このIDを非表示/違反報告)
名無しのりんご - 面白いですね。綺麗な表現がたくさんあって素敵です。頑張ってください！ (2019年12月23日 1時) (レス) id: 694c2bbe46 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ニーナ | 作成日時：2019年11月16日 12時
