第63話 ページ14
そんな彼等を他所に、灰崎とヒロトは一星に近づくとこう言った。
「俺たちがこのまま黙っていると思うか？」
それを聞いた一星は、彼らの方に顔を向けると薄らと笑を浮かべ答えた。
「へえ。俺をどうにかするつもりなんだ。」
「まあ、湖の辺りで転んで、足に怪我をすることもあるよなぁ？」
覚ました態度の一星に小さく舌打ちをした灰崎に代わって、ヒロトが薄ら笑いを浮かべながらそう言った。
それを聞いた一星は少し驚いた顔をしたが、直ぐに元の笑みに戻ると、挑発的な口調で「分かりやすいね、君ら」と続けた。
「それ以上無駄口、叩けなくしてやるよ！」
灰崎はそう叫ぶと、一星に殴りかかった。しかし一星は彼の攻撃を軽々と交わして行く。
「どうしたの？足は一流だけど、手は三流以下みたいだねぇ。」
交わしながらも一星は挑発を辞めなかった。灰崎の攻撃は一発も当たることが無く、ただ彼の息が切れるだけだった。
「あれぇ？もう終わり？」
息を切らしている灰崎を見下ろし、一星は更に挑発的な言葉を投げかける。しかし、そんな彼をヒロトが歯がいじめにし動きを封じた。
「おっと？背中がガラ空きだぜ？
灰崎、やっちまえ！」
灰崎が拳を振り上げた時、パシャパシャッと音がした。驚いた灰崎が音のした方を向くと、そこには携帯を掲げた少女の姿があった。
「は〜い、お疲れさん。良い写真が撮れたわ。」
少女はそう言うと、にっこりと笑い灰崎の方を見た。そして一星とヒロトの方に近づくと更に言葉を続けた。
「これ、側から見たらどう見えると思う？聞くまでもない、唯のリンチだわ。この写真、ネットに流したら面白いことになると思わない？」
彼女は表情を変えずにスマホの画面を灰崎に見せた。彼女の後ろで、一星がふっと笑う。
「てめぇ、また汚い真似を！！」
灰崎は彼女の手からスマホを奪い取ろうとしたが、彼女が素早くスマホを自分の背中の後ろに隠したため叶わなかった。しかし、それで彼女との距離を詰めた灰崎は彼女の胸ぐらを掴み、ニッと笑った。
「今日は邪魔する奴が居ねえからな！その綺麗な顔に傷を付けてやるよ！」
彼の拳が彼女に襲いかかる。彼女の背後から、「辞めろ！」という声が聞こえた。それを聞いた彼女は微かに頬を緩める。それは、この場に及んでまだ自分を気にかけている心優しい少年への笑顔だった。
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エル(プロフ) - 名無しのりんごさん» わあ、ありがとうございます！そう言ってもらえると励みになります^_^更新頑張りますのでこれからも宜しくお願いします！ (2019年12月23日 17時) (
レス) id: 399e3550ff (このIDを非表示/違反報告)
名無しのりんご - 面白いですね。綺麗な表現がたくさんあって素敵です。頑張ってください！ (2019年12月23日 1時) (レス) id: 694c2bbe46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ニーナ | 作成日時：2019年11月16日 12時
