第51話 ページ2
・
「さあ、行きますよ！！」
足の手当てを終え、再びグラウンドに戻った坂野上は普段通りの調子で気合を入れた。
そんな彼を、無機質な笑みを浮かべた少女がじっと見つめていた。
彼女の視線に気付いたのか、坂野上は少女の方を見るとにっと笑ってみせたのである。
「…！」
余りにも予想外だったのか、少女は一瞬大きく目を見開いた。本当に一瞬だったが、坂野上は彼女のその表情をしっかりと目に焼き付けた。
そして、ボールと共に走ってくるルシの方に視線を戻すと、彼の方へと走り出した。
「あー！！しんぱーん！！」
ルシが刃物を出したのを見計らって、坂野上は大声を出した。しかし、それを聞いたルシは咄嗟にスパイクの中へ刃物を引っ込めてしまった。
「そんなの、効かない」
抑揚のない喋り方でそう言うルシを、坂野上は悔しそうに睨みつけた。
そんな彼にお構いなく、試合は続行される。サタンが風丸と氷浦を抜き、Aの方へと走っていく。
「…行って」
彼女が静かにそう言うと、サタンはニヤリと笑い、Aの横を通り過ぎて円堂がいるゴールへと迫っていった。
この試合、どうもがいても日本は勝てない。ならば、怪我人が増える前に終わってくれ。
Aが小さくため息をついたその時、走ってきた明日人がサタンからボールを奪い取った。
「…なぜ？」
そんな明日人を見て、Aの瞳が揺れる。
なぜ、あの子はあんなに必死なのだろう。このフィールドがどういうものか理解できてないのだろうか。このフィールドでは、サッカーなんて彼らを潰す道具でしかないのに…。
明日人は必死な顔でボールを氷浦へと繋ぎ、氷浦は坂野上へとボールを繋いだ。
「もう辞めなよ…。」
失敗しても尚挑もうとする坂野上に、Aは小さく首を横に振った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 31人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
エル(プロフ) - 名無しのりんごさん» わあ、ありがとうございます！そう言ってもらえると励みになります^_^更新頑張りますのでこれからも宜しくお願いします！ (2019年12月23日 17時) (
レス) id: 399e3550ff (このIDを非表示/違反報告)
名無しのりんご - 面白いですね。綺麗な表現がたくさんあって素敵です。頑張ってください！ (2019年12月23日 1時) (レス) id: 694c2bbe46 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ニーナ | 作成日時：2019年11月16日 12時
