初めまして、天使です。[Ren.N]

天使の君ができること。 ページ10

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なんとか状況を飲み込めたような…、気がした私は、空腹だったことを思い出した。
未だおぼつかない足取りで再び玄関へ向かおうとすると、廉もソファから立ち上がる。


廉「ん？どっか行くん？」

『近くのコンビニ。さっき行こうと思って出掛けたんだった。』


廉は「ふーん。」と興味がなさそうな返事をしていたけれど、私の少し後を付いて歩く。
歩いて数分のところにあるコンビニに向かいながら、私は廉のほうを振り返った。


『ねえ、廉は天使なのに空を飛ばないの？』


私の言葉に一瞬宙に視線を移してから、再び私の顔を覗き込んだ。


廉「見たい？飛んでるとこ。」

『……べ、別に見たいわけじゃないけど。気になっただけ。』



いちいち顔を近付けて話すのやめてくれないかな。
このままじゃ本当に心臓がもたない…。

そんな私の気持ちなんて知る由もない廉は、少し恥ずかしそうに言葉を紡ぐ。


廉「飛べるんやけど…、羽根がまだ小さいから上手くないねん。」


せやからもうちょっと練習してから、と話す廉の顔から笑顔が消えた。


『？？…廉？どうしたの？』


歩きながら廉の表情を見つめていると、


廉「危ない…っ、」



私の腕を強く引く廉。
引き寄せられるままに、私は廉の胸に飛び込んだ。



―― その瞬間。


目の前の道を車が猛スピードで走り去っていった。
あのまま歩いていたら、間違いなくぶつかってたよ…。


『…ありがとう、』


廉の肩に手を置いて身体を離そうとするのに、廉は心配そうに顔を寄せてくる。


廉「大丈夫？怪我とかない？」

『大丈夫だよ、廉のお陰でぶつかってないし…。』


私の言葉に安心したのか、笑みを浮かべながら開放してくれた。
でも、どうして車が近付いているのが分かったんだろう。
ここは見通しが悪くて、私は車の存在に全然気が付かなかった。


廉「これも天使のできることの一つやねん。」


―― 俺ら天使は、何かが起こる少し前にそれを知ることができる。
でも俺は見習いやから、ほんの少し先のことしか分からんけど。
さっき話したしょおなんかは、ずっと先のことまで分かるらしいで。



なるほど、だから車が突っ込んでくるのが分かったんだ。
今更だけど、廉は本当に天使なのかも…、と思ったり。


廉「でも心配やから、こうして歩こ。」


廉はシャツの袖から指先しか出さないままで、私の手を取って歩き出した。
さらさらなシャツの生地と、きゅっと繋がれた手の感覚に、私は少し幸せを感じた。



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