何度も祈れば、 ページ27
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道路に落ちる赤を頼りに、私は廉の元へひたすら走った。
早く逢いたい。廉に逢いたい。
その気持ちが、ただひたすら足を動かした。
赤が突然途絶えた。
そこには通りから伸びる、小さな路地。
肩で息をしながら、その路地を覗くと。
『……廉っ!!』
路地に座り込んだ傷だらけの廉の姿があった。
『廉!しっかりして…!』
私は駆け寄って、廉の顔を覗き込んだ。
身体の力が抜けて、堅く目を閉じる廉。
頬や白いシャツ、デニムが赤で染まっている。
―― 廉は誰かを守ったんだ。
廉の顔を見つめながら思った。
でもこんな傷を負うなんて……。
必死に冷静になろうと努めながら、傷の状態を確認する。
肩や腕、腹部が特に赤く染まっている。
見るからに傷が深そう。
でも廉は天使、病院に連れては行けない。
どうしよう、このままじゃ廉が……。
視界が涙でぐらぐら歪んだとき、廉の言葉を思い出した。
―― 俺らも幸せな気持ちで元気になる。傷の治りも更に速くなるんよ。
今、私にできること。
それは、廉に幸せを与えることだ。
意識を失った廉に伝わるのか分からないけれど。
悩んでいる時間なんてない。
私はきつく廉の身体を抱き締めた。
そして赤く染まった頬に唇を寄せて、何度も何度も祈った。
『廉、お願い。戻ってきて…っ!』
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咲笑(プロフ) - ぴまさん» 初めまして。感想ありがとうございます!その曲は知らないのですが、マッチしていたようで良かったです!番外編は、紫耀くんや海人くんにももっと沢山出てもらおうと思ってます。良かったらまた遊びに来てくださいね^^ (2020年6月21日 3時) (レス) id: 83fdcbd5fb (このIDを非表示/違反報告)
咲笑(プロフ) - さやりんさん» 初めまして。感想ありがとうございます!今回はとことん純真無垢な可愛い廉くんにしたかったので、癒されると言っていただけて嬉しいです。番外編では、もっといろんな顔を書いていけたらと思っていますので、また良かったら遊びに来てくださいね^^ (2020年6月21日 2時) (レス) id: 83fdcbd5fb (このIDを非表示/違反報告)
ぴま(プロフ) - はじめまして、完結おめでとうございます!とても綺麗なお話で途中うるうるしながら読んでました> <私が好きな曲で天使はいたんだという曲があるんですけど、完全にこの物語とマッチしていたのもあって本当に好きなお話でした> <番外編楽しみにしてます^^ (2020年6月20日 17時) (レス) id: 3bbab8bcdb (このIDを非表示/違反報告)
さやりん(プロフ) - 初めまして!完結お疲れ様です。めちゃくちゃ面白くて更新が待ち遠しかったお話でした。もぉ、天使なれんが毎回可愛すぎました!お話読むたび癒されました^ ^番外編も楽しみにしております!本当に完結お疲れ様でした!! (2020年6月20日 8時) (レス) id: 0eb138626a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:咲笑 | 作成日時:2020年6月8日 0時