隠れて繋がれた手。 ページ46
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目黒 side
お祝い、と言うけれど、結局向かったのは、いつもの居酒屋。
署長がいるんだし、もっと良い店を…！と係長は慌てていたけれど、「普段みんなが行く店に行きたい」とリクエストした署長のお言葉に甘えて、こうして座敷に座ってビールを飲んでいる。
中井戸さんは興奮した様子で署長に話し掛けている。
交番勤務だったときのことや、ここに来てからのこと、時折署長の肩に手を回して話していて、係長に本気で怒られていた。
署長は優しい笑顔で中井戸さんの話を聞いて……いると思ったんだけど、一緒に中井戸さんと肩を組んで楽しそうにしている。
係長も少しほっとした様子でウーロンハイが入ったジョッキを傾けていた。
中間管理職って、大変そうだな…。
一方、ひかるちゃんは桂さんとお喋り。
刑事課の最年長と最年少という組み合わせだけれど、結構ウマが合うみたいだ。
みんな楽しそうだな…。
いろいろと考え過ぎて、すっかりビールが温くなってしまった。
温いビールって最悪…、と思いながらジョッキを傾ける。
そして、更に考える。
今日は3月12日、名前さんの異動は4月1日。
あと何日あるんだろう…、何週間ある？
頭の中で計算していると、いつの間にか隣に座っていた名前さんに話し掛けられた。
名前「目黒くん、どうしたの。何か考え事？」
名前さん、その顔…。
絶対に僕が何を考えているのか分かっているでしょう。
目黒「別になんでもないですよ…。」
名前「今日はおめでたい日なのに。そんな浮かない顔していたら、みんな心配するよ。」
僕が持っていた温いビールのジョッキをそっと奪って、代わりに烏龍茶を持たせてくれる。
でも大丈夫ですよ、今日は酔わない気がしていますので。
名前「目黒くんがそんな顔してくれるの、実はちょっと嬉しい。」
僕の手から奪ったジョッキを傾けて、一気にビールを飲み干す名前さん。
一人慌てる僕に、「誰も見てないよ」とくすくす笑った。
そしてテーブルの下で、僕の手に触れた名前さんの指先。
堪らずに指を絡ませるようにして手を繋ぐと、笑みを深めながら応えてくれた。
この時間がずっと続けば良いのに。
僕は叶わない願いを、いつまでも頭の中で繰り返していた。
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咲笑(プロフ) - 結と名乗る者（id: 361e8a8309）のコメントは、すべて削除致しました。感想と呼べるものではないコメントをいくつも一方的に残す行為は、悪質であり、異常としか言いようがありません。今後は私の作品の閲覧及びコメントを残す行為はおやめください。 (2023年4月22日 7時) (
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作者名：咲笑 | 作成日時：2020年3月27日 20時
