2話 ページ3
「フラスカーティ…?」
リゼルヴァは大切だったが失った一人の少女の名を呼んだ。
が、彼女が振り返ったそこには薄暗い路地しか広がっていない。
足元のレンガ造りの床を踏みしめた。
…当然、返事を返してくれるはずもないか。
そうして、またゆっくりと彼女は歩き出した。
リゼルヴァの暗く見える紺色の義眼は何も映してはいない。
彼女はまるで精巧に作られた美しい人形のような印象がある。
…生きているような気がしないということだろう。
フラスカーティは「パッショーネ」という組織の中の児童売買グループに恐らく攫われた。
リゼルヴァはそう考えていた。
彼女はまず、フラスカーティが攫われた場所を含め、近くに縄張りを持つギャング団を洗い出した。
それから、そのギャング団の中に子どもを売り物にするグループがあるかで更に絞った。
ーーーーそして割り出されたのが「パッショーネ」
というギャング団だったのである。
また、フラスカーティは親に捨てられて路上で暮らしてきた、ストリートチルドレンの一人であった。
フラスカーティのようなストリートチルドレンは攫われたとしても、騒ぎ立てられることはほとんどない。
あったとしても非常に稀である。
それからリゼルヴァは2年近くフラスカーティを探し続けていた。
手がかりは障害に阻まれ、見つけにくいということもあったのだろう。
ーーーーーそうして、今に至る。
今、この瞬間だって彼女はあの少女を探している。
薄暗い路地を抜け、人の声だけが聞こえる表通りに出る。
「どこ…」
ポツリと、リゼルヴァはそう呟いた。
ふと、うつむいていた顔を上げる。
「(…?)」
彼女は何か違和感を感じたようだった。
目の前の人たちの[なにか]が見える。
・・・・・ ・・・ ・・・・・・・・・・
心臓辺りに[なにか]がぼんやりとあるのが。
そしてそれらの人々は中心に2つの[なにか]を囲み、佇んでいる。
おかしな状況だった。
…緊張と好奇心。
そのようなことを彼女は人々の[なにか]からほとんど本能的に読み取っていた。
しかし、彼女にとってはどうでも良いことだったのだろう。
そこをも通り抜けようとし、リゼルヴァはそこに向かって一歩足を踏み出した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
[なにか]というのはその人の心の状態と思われます。
フラスカーティはリゼルヴァと親しかった少女だったのでしょうか?
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作者名:珠下駄ナア | 作成日時:2019年11月29日 18時