第8話 ページ11
「あ〜、今日は楽しかったね〜!やだ、帰りたくないぃ...」
Aはそう言うと、手を上に伸ばしながらストレッチする。
それを見た棘が、同じ様に真似していた。
「ね、ねえA、これ...さっき取ったんだけど、いる?」
憂太の手には、もふもふとした真っ白の兎の人形が抱えられていた。
「え、これ憂太が取ったの!?私が絶対取れないと思って諦めてたやつだ...」
実際憂太もかなり苦戦して、12回目にやっと取れた程だ。
真希はそれを見て、改めて憂太の凄さを思い知った。
「で、でも、本当に貰っちゃっていいの?取るの大変だったでしょ?」
「いや、全然大変じゃなかったよ!あれ、いつの間に取れてたーって感じだったし。」
嘘つけ、と真希は思ったが、憂太の頑張りを見ている以上それは言わなかった。
「...えへへ、ありがと。大切にするね!」
憂太の耳は、みるみる内に赤くなっていた。
だが、”幼馴染”としての対応で無くてはいけないと思ったのか、頭をブンブン振って無かった事にしようとした。
「うん。Aが喜んでくれて良かった。」
憂太は昔と変わらない、包み込むような優しい笑顔をAに向けた。
きっとこれが憂太なりの、”幼馴染”に向ける笑顔だったのだろう。
真希にはそれが、意図的に作っている物なのだとすぐに分かった。
「やっぱあいつら見てると、なんかモヤモヤするよな。」
「まぁ、仕方ないよ。幼い頃から大切な人を失って、お互いに出来た傷を補い合いながら生きてきた二人には、きっと何かしらのでこぼことした異様な感情が芽生えてるんだよ。
俺達はそれを、側で見守っていることしか出来ないんだからさ。」
「...そうだな、正論だ。」
そんなことくらい、三人共理解してない様である程度理解していた。
だが、それで理解したとは言えないことを理解しているから、三人共理解出来ないということを理解していたのだ。
「あいつらに、いつか望む未来が待ってるといいよな。」
「ああ、本当にそう思う。」
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わっぱみがき#上弦の弐#万世極楽教 - 泣いた。全身の穴という穴、そして毛穴から涙がでた(?) (11月6日 15時) (レス) @page36 id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
Yuuken(プロフ) - 完結おつかれさまでした!!大好きな作品です! (2021年7月7日 17時) (レス) id: 2de2b68dcc (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 執筆お疲れ様です!いつも応援してます!!頑張って下さい‥!! (2021年7月7日 0時) (レス) id: 88c2d3353b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:碓氷エマ | 作成日時:2021年6月13日 16時