7 ≪the past≫ ページ7
「雨、止みそうにないですね」
フローリングワイパーをかけながら佐藤さんは窓の外を見た。
俺もテーブルを拭いていた手を止めて外を眺める。
モデルハウスに客はいない。
今日は予約すら入っていない。
ただでさえ平日は来場者が少ない。
その上この長雨。
早く梅雨よ明けろ、と恨めしい気持ちになった。
「あっ！そう言えば」
佐藤さんは俺を見て悪戯っぽく笑う。
噂好きの彼女のことだ。
どうせまたしょうもない噂話なのだろうとゲンナリする。
「インフォメーションセンターの野田さんって櫻井さんのこと好きらしいですよ？
知ってました？」
あー・・・やっぱりだ。
「えー、本当に？
全然気付かなかったなあ・・・」
「実は昨日センターの仁科さんから聞いちゃったんですよ！」
「へえ・・・」
本当は薄々は気付いていた。
センターに用事で行くたび、野田さんは俺のことを恋する乙女の目で見ていたからだ。
でも俺は全く気付いていない素振りをして無視してたけど。
「今度デートに誘ってあげたらどうですか〜？
野田さん、めっちゃいい子じゃないですか。顔も可愛いし」
つうか、どうして世の女どもはこうも面倒くさいんだ？
「いやいや。
俺なんかじゃ釣り合わないよ」
「またまた〜」
「ホントだって！」
カミングアウトはしていない。
これから先、するつもりもない。
ただ体の相性の良さそうな男と寝て、楽しんで、バイバイ。
そんな後腐れない付き合いが俺には合ってる。
だから今の自分の生き方に俺は十分満足していたはずなのに・・・。
そんな時、俺の目の前に現れたのだ。
大野智が・・・。
その時、展示場のインターホンが鳴り、すぐさま「はーい」と佐藤さんが玄関に出てくれた。
「いらっしゃいませ」
「すみません、予約してないんですけど・・・」
「全然大丈夫ですよ。
どうぞおあがり下さい」
どうやらアポなしの飛び込み客のようだった。
「ではまずこちらへどうぞ」
彼女に案内されながらリビングルームへ入って来た男。
「あっ・・・」
思わず声が漏れた。
「あ、あの時の」
男も俺を見て驚く。
なんとその客は以前バーで絡まれているところを俺が助けたあの男だったのだ。
「え？
お二人、お知り合いなんですか？」
佐藤さんは俺と男を交互に見てキョトンとした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 462人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なつ(プロフ) - みいさん» みいさん、こんにちは！もちろん毎回伏線を張り巡らせていますよ。智くんの言動と翔くんが智くんに対して感じていることが全て鍵となっております。謎解きしてみて下さいね。どうぞお楽しみに！ (2021年6月21日 16時) (
レス) id: 42fc626692 (このIDを非表示/違反報告)
みい(プロフ) - なつさん、こんにちは！更新ありがとうございます！更新されたかなと毎日楽しみにこちらを覗いています^ ^なんだかたくさん伏線が張られていってる気がしますが、勝手に推理しながら謎多き智を楽しんでます！続きを楽しみにお待ちしております^ ^ (2021年6月21日 15時) (レス) id: 4b882d58ca (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - mioさん» （続き）こちらのオハナシ、気に入ってくれて本当に嬉しいです。過去と現在を行ったり来たりしていますが、まだまだ序盤。乞うご期待下さい。そして！私は実はｍｉｏさんの某人気連載を拝読していて、そんな大人気の方からのコメントにもうドキドキしてます！！ (2021年6月20日 22時) (レス) id: 42fc626692 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - mioさん» mioさん、初めまして。コメントありがとうございます！ (2021年6月20日 22時) (レス) id: 42fc626692 (このIDを非表示/違反報告)
mio(プロフ) - 続）お話の世界に取り込まれて、はっ！！読み終えてしまった！！となっています。もう続きが楽しみすぎてたまらないのですが、どうぞご無理なさらず、なつさんのペースでお書きくださいませ。ドキドキしながら待っています(〃ω〃) (2021年6月20日 14時) (レス) id: 3fedb29ffc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なつ
| 作成日時：2021年5月21日 18時
