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「智！」
勢いよく開けたドアがガタンッと大きな音を立てる。
そのドアの向こうに広がる光景に俺は絶句するしかなかった。
「嘘だろ」
そこには何もなかったのだ。
家具も家電も何もかも。
狭い玄関に立ち尽し、俺は茫然とする。
「どうして・・・」
もぬけの殻となったアパートの一室。
ここに大野智という人間が住んでいた痕跡など何一つない。
二人で過ごした日々の片鱗さえも。
上着のポケットからスマホを取り出し見慣れた番号に掛ける。
『この番号は現在使われておりません』
無機質なアナウンスに愕然とした。
いつの間に解約したというのか。
他に自分と智をつなぐものがないか考える。
そして俺は自分の職場へと急いだ。
店休日の展示場。
スペアキーを使って中へ忍び込む。
誰もいないモデルハウスは静か過ぎて気味が悪かった。
仕事以外で顧客情報を盗み見する背徳感がさらに居心地を悪くする。
開錠したキャビネットからファイルを取り出しペラペラとページを捲る。
「あった」
そのページには智の字で自身の個人情報が記入されていた。
確かこれを書いてもらったのは二回目に会った日。
『新築の木の匂いっていいもんですね』
そう言いながらペンを走らせていた智。
今でもその穏やかな表情が鮮明に浮かび、胸が苦しくなる。
そのページをスマホのカメラで撮影し、展示場を後にした。
次に向かった先は智の職場である『株式会社ワタナベ食品』。
さっき写真に撮ったアンケート用紙に記入してある情報を頼りに辿り着いた。
俺が智の職場を実際に訪れるのは初めてのこと。
「ここか」
ちょうど俺が着いたタイミングで工場からゾロゾロと人が出て来た。
「あのっ・・・」
中年女性二人組を咄嗟に呼び止める。
待ち構えるように従業員通用門の外に立っていた俺を見て、二人は怪訝な顔をした。
「何か？」
「実は友人がこちらで働いていて・・・大野智って言うんですが」
「大野智？」
そこで二人は顔を見合わせる。
「こちらでは主任をしてるって聞いてます」
「そんな人いないわよね？」
「ええ」
二人はキッパリと否定した。
すでに引き払ったアパート。
繋がらない電話。
そして嘘の勤務先。
大野智はどこへ消えた？
なぜ俺に嘘を吐いた？
数々の疑問が頭の中を駆け巡り、俺は途方に暮れた。
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なつ(プロフ) - みいさん» みいさん、こんにちは！もちろん毎回伏線を張り巡らせていますよ。智くんの言動と翔くんが智くんに対して感じていることが全て鍵となっております。謎解きしてみて下さいね。どうぞお楽しみに！ (2021年6月21日 16時) (
レス) id: 42fc626692 (このIDを非表示/違反報告)
みい(プロフ) - なつさん、こんにちは！更新ありがとうございます！更新されたかなと毎日楽しみにこちらを覗いています^ ^なんだかたくさん伏線が張られていってる気がしますが、勝手に推理しながら謎多き智を楽しんでます！続きを楽しみにお待ちしております^ ^ (2021年6月21日 15時) (レス) id: 4b882d58ca (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - mioさん» （続き）こちらのオハナシ、気に入ってくれて本当に嬉しいです。過去と現在を行ったり来たりしていますが、まだまだ序盤。乞うご期待下さい。そして！私は実はｍｉｏさんの某人気連載を拝読していて、そんな大人気の方からのコメントにもうドキドキしてます！！ (2021年6月20日 22時) (レス) id: 42fc626692 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - mioさん» mioさん、初めまして。コメントありがとうございます！ (2021年6月20日 22時) (レス) id: 42fc626692 (このIDを非表示/違反報告)
mio(プロフ) - 続）お話の世界に取り込まれて、はっ！！読み終えてしまった！！となっています。もう続きが楽しみすぎてたまらないのですが、どうぞご無理なさらず、なつさんのペースでお書きくださいませ。ドキドキしながら待っています(〃ω〃) (2021年6月20日 14時) (レス) id: 3fedb29ffc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なつ
| 作成日時：2021年5月21日 18時
