5 ページ5
「櫻井くん」
肩を揺すられ、ぼんやりと目を覚ました。
目の前に課長の顔が現れ、俺は一気に覚醒する。
「すみませんっ」
慌てて飛び起きる。
どうやら俺はソファで眠っていたようだ。
「急に倒れるからビックリしたよ。
具合はどうなの？」
「もう大丈夫です。
そんなことより監査は！？」
「終わったよ」
「えぇっ」
気付けばすでに夕方だった。
「まあなんとか私一人でも大丈夫だったよ。
報告書は私がまとめておくから」
「ご迷惑をおかけしました・・・」
「さすがの監査部の帝王も日頃の疲れが溜まっていたのかな？」
そう言って課長は苦笑する。
俺としたことが。
「では帰ろうか」と課長に促され、事務所内を見回せばそこにいたのは事務員の菊田のみ。
パソコンに向かって黙々と入力作業をしていた。
相葉と大野の姿はどこにもない。
「あの二人は？」
「ああ、相葉くんたちは終業になった途端、慌てて帰っていったよ。
部活があるとかなんとか言って・・・」
「部活？」
何だ、それは？
「スイーツ部ですよ」
菊田がパソコンに目を向けたまま淡々と答える。
「スイーツ部？」
「ええ。
美味しいスイーツを堪能し、その感動を共有するというのが主な活動内容です。
ちなみに大野さんが部長で、相葉さんが副部長で、部員はその二人だけです」
「は？」
それが部活だというのか？
「今日は先週オープンした和風カフェ・ジャポニズムに行っています。
今ごろ和栗モンブランを食べているはずです」
「はあ・・・？」
コロネの次はモンブランだと？
そんなふざけたことばかりやっているから、営業成績が悪いんじゃないのか？
低能なヤツらめ・・・。
でも・・・と俺は思い直す。
相葉についてはどうでもいいのだが、大野に介抱の礼だけは言っておきたかった。
スイーツ部の部長だか何だか知らんが、余計な借りは作っておきたくなかったからだ。
そうでなければ帝王櫻井の名が廃るというものだろう？
「うぅっ・・・」
まただ。
大野のことを考えると、なぜか一瞬ズキンと胸が痛んだ。
その日は自分の職務を果たすなく本社に戻ることとなった。
結局、あの胸の痛みと息苦しさが何だったのかはよく分からなかったが、一時的なものだったのだろうと思っていた。
ところがだ。
この話にはまだ続きがあって、監査部の帝王であるこの俺を悩ませる事態となったのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 617人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なつ(プロフ) - はるさん、こんばんは！マカロンのバッジはもちろん智くんのお手製です。スイーツ部員はみんな持ってますよ（笑）これから帝王櫻井はスイーツ部の平部員として翻弄されます。どうぞお楽しみに！ (2020年7月19日 22時) (
レス) id: c361ea56ba (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - なつさん、こんにちは！マカロンのバッチどこに売ってるのー！まさか手作り？！読みながら面白くてニヤニヤしちゃうからまずいです（関係ないわ！） (2020年7月19日 10時) (レス) id: 6cd0f843d6 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - みいさん» みいさん、こんにちは！翔太郎くん、確かに素直じゃないですね。カッコ悪いところ見られて意地っ張りになってる（笑）果たして智くんはなぜこんなに押しが強いのか。乞うご期待！ (2020年7月18日 10時) (レス) id: 42fc626692 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - ちたさん» ちたさん、こんにちは。もちろんハッピーエンドです。でもそこに行き着くまでは泣けるハナシです。翔太郎の努力が報われなさ過ぎてね（笑）頑張れ！翔太郎！！ (2020年7月18日 10時) (レス) id: 42fc626692 (このIDを非表示/違反報告)
みい(プロフ) - なつさん更新ありがとうございます！ずっと待っておりました！翔太郎くん素直じゃないですね〜智くんも意外と押しが強くて、この2人どうなっていくの〜〜？続きを楽しみにしております！ (2020年7月13日 8時) (レス) id: 6cb3bcb237 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なつ
| 作成日時：2020年5月10日 12時
