148 ページ2
「とうとうバレちゃったかぁ・・・。
ねえ、俺の演技、なかなか上手かったでしょ？」
“演技”というフレーズは俺を戦慄させた。
今、目の前にいるのは好青年の塊のような翔くんでも、純真無垢な子どものような翔くんでもない。
少なくとも俺のよく知っている彼ではなかった。
だったらこの男は誰なんだ・・・？
「・・・いつからなんだ？」
「いつからって？」
彼は冷たい目をして俺を見下ろした。
俺は蛇に睨まれた蛙のような気持ちになる。
今はただ身が竦み、逃げることも立ち向かうことも出来ない。
「あなた、馬鹿じゃないの？
事故に遭って記憶喪失だなんて映画とかドラマの世界じゃないんだからさあ！」
「え？」
翔くんは記憶を失っていたんじゃなかったのか？
「あのね？
現実はそうドラマチックには出来てないんだよ？
でもそれを本気にしちゃうところがあなたの可愛いところなんだろうけど」
「だったら・・・」
全身に鳥肌が立つ。
この続きを聞いてしまったら、もう何もかもが信じられなくなってしまうような気がした。
「そうだよ？
俺は最初から記憶なんて無くしちゃいない。
自分が誰なのかも山桜の絵のこともぜーんぶ憶えてるよ。
あ、それから・・・」
彼は淡々と話す。
「あなたが勝手に勘違いして俺を裏切ったことも、ね」
まさかあなたが憶えてない訳ないよね？
そういうことだったのか、と、そこで俺はようやく合点がいく。
事故後、彼が俺の名前と電話番号だけを憶えていたという違和感。
あれは俺をおびき寄せるために彼に仕組まれたことだったのだ。
「どうしてそんなことをしたんだ？」
「どうしてって、そんなこと俺に聞くぅ？」
俺の問いに、翔くんは眉間にしわを寄せ、思い切り不快感を露わにする。
「俺が聞いてるんだ。
ちゃんと答えろよ」
「だったら教えてあげるよ」
そう言って彼は鋭く俺を睨んで続けた。
「あなたに復讐するためだよ・・・・・智くん」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1168人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
花咲*(プロフ) - なつさん^_^大好きなお話また、読み返して萌を頂いてます。このお話も大好き。 (2020年11月22日 14時) (
レス) id: 7a9a23c4d1 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - まったりやさん» まったりやさん、こんばんは！レスが遅くなってスミマセン！！しばらくツクを開いておりませんでした(-_-;)ゴメンナサイ。さてさて。なんとか完結しましたが、最後はあの方たちも再登場でドタバタでした（笑）楽しんでもらえたのなら良かった♪最後までありがとう！ (2020年3月8日 22時) (レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
まったりや(プロフ) - なつさん、完結＆後日談、ありがとうございます。レジェンド御一行に再開できてお礼も伝えられて良かった良かった。リアルの雑音（？）もある中ですが、なつさんの描く物語には癒やしと楽しさがまさに泉の如く溢れていますね。でもなつさん、無理はしないでくださいね。 (2020年2月27日 13時) (レス) id: 4ac657099e (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - じゅーくろーさん» じゅーくろーさん、こんばんは！こちらこそ最後までお付き合いありがとうございました！潤くんには少しかわいそうな展開でしたが、今は心から二人を祝福してくれているでしょう。やっぱり山はハッピーエンドじゃないと！！ (2020年2月19日 0時) (レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - 葉子さん» 葉子さん、こんばんは！やっとやっと完結！最後までお付き合いありがとうございました♪なんとかハッピーエンド。山はやっぱりこうでなくちゃ！！過去作品も読んで下さってありがとうございます。今度感想教えて下さいね☆ (2020年2月19日 0時) (レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なつ
| 作成日時：2019年11月14日 0時
