後日談 ページ29
「ちょっと待ってよぉ！」
先をスタスタ歩く彼の背中を必死に追いかけると、智くんがクルリと振り返る。
「翔くん、おっせぇよ」
一見、人見知りで素っ気なくて、口数も少ない。
だけど本当はすごく優しい。
智くんってそういう人。
「智くんが早過ぎるんだよ」
小言を言いながら智くんの隣に並ぶ。
すると彼は何食わぬ顔をしながらも俺の歩調に合わせてくれた。
その何気ない優しさに、俺は一瞬で笑顔になる。
どこからかウグイスの鳴き声が聞こえた。
今日は早起きをして二人でこの山にやって来た。
『山桜。
春になったらまた二人で見に行くか！』
そう。
あの約束を叶えるために。
俺はずっと今日の日を楽しみにしていて、カレンダーに付けた丸印を目にするたび「早く行きたいね」と彼に言った。
もちろん智くんだってずっと心待ちにしてくれていた。
だって俺たちの出会いを導いてくれたのは他でもない。
山桜なのだから。
「綺麗だ・・・」
彼と初めて会った場所に立った。
目の前には群れを成すように咲き誇る山桜の木々。
桜色と空の青色が鮮やかに目に映る。
あの日、智くんと見た景色と何も変わらない。
「懐かしいな・・・」
不意に胸が熱くなった。
その時、ヒューッと冷たい風が吹き、ウインドブレーカーがシャカシャカ音を立てた。
「寒くない？」
「大丈夫だって」
風に晒されて頬を赤くした智くん。
すっと彼の頬に手を伸ばした。
「冷たくなってる」
「翔くんだって頬っぺた真っ赤だぞ」
「俺のことはどうでもいいんだよ」
愛おしい気持ちで、俺の頬を撫でた。
きっとこの流れでキスするんだろうなと思った。
幸い他に人はいない。
「ねえ、智くん」
「ん？」
「好きだよ」
「うん」
「これからもずっと」
「うん」
「キスしてもいい？」
「うん・・・」
普段、智くんは二人きりでいても、あんまりイチャイチャしたがらない。
それが俺的には少々不満だった。
だけど、今日は智くんにしては珍しく素直。
ああ、もう感動だ・・・。
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花咲*(プロフ) - なつさん^_^大好きなお話また、読み返して萌を頂いてます。このお話も大好き。 (2020年11月22日 14時) (
レス) id: 7a9a23c4d1 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - まったりやさん» まったりやさん、こんばんは！レスが遅くなってスミマセン！！しばらくツクを開いておりませんでした(-_-;)ゴメンナサイ。さてさて。なんとか完結しましたが、最後はあの方たちも再登場でドタバタでした（笑）楽しんでもらえたのなら良かった♪最後までありがとう！ (2020年3月8日 22時) (レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
まったりや(プロフ) - なつさん、完結＆後日談、ありがとうございます。レジェンド御一行に再開できてお礼も伝えられて良かった良かった。リアルの雑音（？）もある中ですが、なつさんの描く物語には癒やしと楽しさがまさに泉の如く溢れていますね。でもなつさん、無理はしないでくださいね。 (2020年2月27日 13時) (レス) id: 4ac657099e (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - じゅーくろーさん» じゅーくろーさん、こんばんは！こちらこそ最後までお付き合いありがとうございました！潤くんには少しかわいそうな展開でしたが、今は心から二人を祝福してくれているでしょう。やっぱり山はハッピーエンドじゃないと！！ (2020年2月19日 0時) (レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - 葉子さん» 葉子さん、こんばんは！やっとやっと完結！最後までお付き合いありがとうございました♪なんとかハッピーエンド。山はやっぱりこうでなくちゃ！！過去作品も読んで下さってありがとうございます。今度感想教えて下さいね☆ (2020年2月19日 0時) (レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なつ
| 作成日時：2019年11月14日 0時
