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翔くんと出会った頃の夢を見た。
刹那、左肩にあの重みと香りが蘇り切なくなる。
「あー・・・」
クシャクシャと寝ぐせ頭を掻く。
時刻はまだ朝の五時。
深いため息を吐いた。
すっかり目が冴えてしまった。
水でも飲もうと寝室から出る。
すると向かいの翔くんの部屋の引き戸が少し開いているのに気付いた。
どうにも気になって、悪いと思いつつ中を覗く。
ところが敷いていた布団はすでに畳んであり、誰もいない。
翔くんはどこへ行った？
不思議に思っていると、リビングから誰かの話し声が聞こえた。
彼はそこにいた。
正確に言えば、ソファの上で膝を抱えテレビをボーッと見ていた。
その虚ろな目はキャスターの言葉を理解しているのかどうかも疑わしい。
「翔くん？」
呼んでも返事はない。
「あの、翔く・・・」
「何も思い出せないんだ」
震える声でそう言った彼。
ゆっくりこちらに顔を向け、ユラユラと瞳を揺らす。
その大きな目からは今にも涙が零れそう。
頼むからそんな顔しないでほしい・・・。
「テレビを見ても何がなんだか訳が分からなくて」
だから急に怖くなったのだと彼は訴えた。
すぐにでも翔くんを抱き締めたい衝動に駆られた。
そして不安がる彼に心配しなくて大丈夫だよ、と言えたらどんなに楽か・・・。
「焦らなくていいよ。
先生だってそう言ってたでしょ」
今は模範解答みたいな言葉しかかけられない自分が情けない・・・。
「ねえ、大野くん」
キッチンに行く俺を目で追いながら翔くんが呼ぶ。
「うん？何？」
「どうしてそんなに優しいの？」
「え？」
彼の言葉に蛇口に伸ばしかけた手が止まる。
「家に泊めてくれたり、ご飯を食べさせてくれたり・・・それに治療費だって・・・」
翔くんが申し訳なさそうな顔をする。
違うんだよ、翔くん。
俺は優しい人間なんかじゃない。
本当はただの薄情者なんだよ・・・。
「先生が言ってた。
事故の直前、俺は何も持たずに・・・えっと、夜中の車道の真ん中をフラフラ歩いてたって。
だからえっと・・・その・・・」
俺は辛抱強く彼の言葉の続きを待つ。
健忘症、いわゆる記憶喪失の人の言葉がたどたどしくなるのだということは、先生から聞かされていた。
ゆっくりでいいんだよ。
俺は彼に目でそう訴える。
翔くんは頷き、ふうっと息を吐いた。
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なつ(プロフ) - ちたさん» ちたさん、おはよう！少しずつ二人の過去が分かってきましたが、まだまだ謎が多くて(笑)事の真相は もう少し先で。でもちたさん名探偵だからなんとなく分かってますよね？？ (2019年6月8日 6時) (
レス) id: c9214b2a41 (このIDを非表示/違反報告)
ちた(プロフ) - なつさん☆遂に心を通わせた昔の登場ですね。それにしても、こんなに素敵な二人なのに…。この後、二人に何があったのか！気になる！ (2019年6月6日 23時) (レス) id: 07a929c9a6 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - smsさん» smsさん、こんばんは！二人の過去、やっぱり気になりますよね〜。徐々に分かってくるのでもうしばしお待ちを！更新遅めですが、最後までどうぞよろしくお願いしますm(__)m (2019年6月5日 22時) (レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
sms(プロフ) - なつさん。おはよう！更新ありがとう！読むたびに、ますます気になって仕方がない。何がこの2人にはあったのか。この先も楽しみに更新待ってまーす！ (2019年6月3日 6時) (レス) id: 0c7cc7edc1 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - はるさん» はるさん、こんばんは！二人の過去に何があって、この先どうなるのか。ちょっとドキドキしますよね。このオハナシ、気に入ってもらえているようで、私も嬉しいです！！ありがとう♪ (2019年6月3日 0時) (レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なつ
| 作成日時：2019年5月7日 15時
