24 ≪the past≫ ページ24
それからすぐタクシーを拾った。
今日も櫻井さんはホテルに滞在するという。
位置的に先に櫻井さんが降り、それから俺の自宅へ向かうことにした。
「大野さんは一人暮らしなんですか？」
タクシーに乗り込んでから話題はお互いの住まいの話に。
「そうですよ。
古くて駅から離れてますけど、割と広いんで気に入ってます」
「へえ、そうなんだ」
一人暮らしは大学を出てから。
荷物、特に画材道具が多くて俺は広めの部屋を探していた。
その時タイミングよく空きの出たマンション。
築三十年で駅まで徒歩二十五分という難点はあったけど、リビングのほかに二部屋、しかも南向きとあって俺は即決した。
そしてここに決めたもう一つの理由。
それは潤の店に近いという点だった。
自転車でだいたい十分くらい。
平日の夜はほとんどあの店で食べ、店が休みの日は潤が作りに来てくれることがあったりなかったり。
『早く彼女見つけろよ』
潤にはいつもそう口酸っぱく言われていた。
自分が食べさせなかったら、いつか俺が野垂れ死ぬと思っているらしい。
だけど、俺としては『その言葉そっくりそのままお返しします』といったところ。
何はともあれ、自炊が苦手な自分としてはこれほど好都合な物件はなかった。
「櫻井さんは？」
「俺は実家暮らしですよ。
ほら、実家が職場なんで・・・」
「そっか。
だったら通勤は楽ですね。
満員電車にウンザリすることも遅刻の心配もないし」
「まあ、そうですね。
でも一人暮らしは憧れるなあ・・・」
「確かに自由ではありますけどね。
ただ時々無性に寂しくなることもありますよ？」
「それでも・・・俺は自由が欲しいです」
彼は感情を込めてそう言った。
まるで切なる願いを吐露するかのように。
そして櫻井さんは小さくあくびをした。
「眠いですか？」
「・・・少しだけ」
「着いたら起こすんで寝てていいですよ」
「じゃあ、肩借りてもいいですか？」
「え？」
俺の返事も待たず、彼は俺の肩にもたれかかり目をつぶる。
程なくしてすぐそばから聞こえた寝息。
肩の重みにも近過ぎる距離感にも不思議と嫌な気はしない。
シャンプーなのか、香水なのか。
櫻井さんから爽やかな香りがした。
「ねむっ・・・」
その香りに誘われるように俺も眠くなる。
着いたら起こすって言ったのに・・・。
自分の意思とは反対に俺はゆっくり目を閉じた。
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なつ(プロフ) - ちたさん» ちたさん、おはよう！少しずつ二人の過去が分かってきましたが、まだまだ謎が多くて(笑)事の真相は もう少し先で。でもちたさん名探偵だからなんとなく分かってますよね？？ (2019年6月8日 6時) (
レス) id: c9214b2a41 (このIDを非表示/違反報告)
ちた(プロフ) - なつさん☆遂に心を通わせた昔の登場ですね。それにしても、こんなに素敵な二人なのに…。この後、二人に何があったのか！気になる！ (2019年6月6日 23時) (レス) id: 07a929c9a6 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - smsさん» smsさん、こんばんは！二人の過去、やっぱり気になりますよね〜。徐々に分かってくるのでもうしばしお待ちを！更新遅めですが、最後までどうぞよろしくお願いしますm(__)m (2019年6月5日 22時) (レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
sms(プロフ) - なつさん。おはよう！更新ありがとう！読むたびに、ますます気になって仕方がない。何がこの2人にはあったのか。この先も楽しみに更新待ってまーす！ (2019年6月3日 6時) (レス) id: 0c7cc7edc1 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - はるさん» はるさん、こんばんは！二人の過去に何があって、この先どうなるのか。ちょっとドキドキしますよね。このオハナシ、気に入ってもらえているようで、私も嬉しいです！！ありがとう♪ (2019年6月3日 0時) (レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なつ
| 作成日時：2019年5月7日 15時
