42 ページ43
潤くんのいない年末年始は本当に味気ないものだった。
実家に帰る気にもなれず、年越しは一人でインスタントのそばと発泡酒、そしてさきいか。
正月は寝てるのかテレビを観てるのかさえも分からないほどダラダラ過ごした。
去年の今ごろは潤くんと二人で初詣に行ったとか、潤くんが俺のために雑煮を作ってくれたとか・・・。
考えるのは彼のことばかり。
ガラにもなく感傷的になっている自分が情けなくて情けなくて・・・。
心にはポッカリと大きな穴。
その原因が自分だってこと、頭では分かっている。
潤くんは俺のために自ら身を引いてくれたのだ。
それは分かってる。
分かってるけど・・・。
「はあ・・・」
今では意味もなくため息を吐くことが癖になってしまった。
こんなに虚しい正月は生まれて初めてだった。
「大野さん、郵便で〜す」
「あ、どうも・・・」
正月休みが明け、気分がようやく平常モードに戻ってきた一月のとある朝。
営業部の俺宛に一通の封書が送られてきた。
株式会社太陽事務機販売
営業部 大野智 様
結婚式の招待状みたいな白い封筒。
裏を返すと、差出人はなんと櫻井地所の代表取締役。
つまり翔くんのおじさんからだった。
怪訝に思いながら封を開けると、それは来月催される新社屋の落成パーティーの案内だった。
どうやら取引先を招いてのお披露目のよう。
封筒の中には出欠の返信ハガキも入っていた。
招待された旨を課長に報告すると、必ず出席するようにと言われた。
今回の取引を機に櫻井地所の全国の支社と取引出来るよう自社を売り込めというのが課長の狙いだった。
「落成パーティーか・・・」
仕事とは言え、どうしても気が進まなかった。
なぜなら必ず副社長も顔を出すだろうから・・・。
あれから翔くんとは一度も連絡を取っていない。
一体どんな顔して会えばいいのか途方に暮れた。
それでも出席しなければならないのが、営業のツライところ。
俺は『出席』の文字を〇で囲んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 478人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なつ(プロフ) - 静さん» 静さん、初めまして！コメントをありがとうございます♪静さんが素敵な時間を過ごるお手伝いが出来て良かった☆嬉しいお言葉をありがとうございます。いろいろと世知辛い世の中ですが（大げさ〜）、最後までお付き合い下さいね♪ (2018年11月4日 21時) (
レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
静(プロフ) - 初めまして静です。なつさんの言葉をよみました。そして、なつさんに有難うございますと言いたくなりました。嫌な想いをされて、私なら、閉じちゃうかも知れないのに公開して下さって。その強さのお陰で素敵な時間を過ごせています。応援しています。 (2018年10月31日 14時) (レス) id: 3fb1bcad7d (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - smsさん» smsさん、こんばんは！飛び付いて読んでくれて感無量！本当にありがとう♪まだまだ波乱続きですが、そろそろ完結が見えてきました。最後までどうぞよろしくね！いつもありがとう☆ (2018年10月19日 0時) (レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
sms(プロフ) - なつさん、おはよう。更新ありがとう。更新のお知らせがあったら、飛びついて読んでる！まだまだ、波乱が待っていそうな感じだね…完結まで毎回楽しみに更新のお知らせ待ってます♪ (2018年10月18日 6時) (レス) id: f0f7b145e7 (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - alisaさん» alisaさん、こんばんは！好きって気持ちはなかなか一筋縄にはいかないものですねぇ。智くん、やっと動き始めましたが、もう一波乱起こりそうです。みんなが幸せになれる結末を目指して頑張ります♪大野さんと僕、一体どこで買えるんでしょう？ (2018年10月17日 23時) (レス) id: 3dbb952a56 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なつ
| 作成日時：2018年9月16日 4時
