月が微笑むから 3 【山】 (ページ7)

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「あ、もしかして経済評論家ごっことかやってんの？」

うん、そうに違いない。
なかなかインテリな遊びをしてるな、智くん。

「え、何それ？
今そんな遊びが流行ってんの？」

それなのに智くんは不思議そうな顔をして首を傾げている。
どうやら彼は本気で軽減税率と未来の日本の消費について考察している模様・・・。

なんだ、それ。

「あ、そうそう！」

俺が考え込んでいると、智くんが何かを思いついたように手をパンッと叩いて声を上げた。

「ん？何？」

「今日、翔くんが帰る頃に迎えに行くからさ～、もし残業で遅くなるときは電話してよ」

「え・・・そうなの？
うん、分かったよ・・・」

今までも智くんが県庁まで迎えに来てくれたことは何度もあった。
でもそれはいつも気まぐれで、気が向いた時だけふらっとやって来ていたのに、今日はなぜかお迎えの予告あり。

不可解過ぎる。

「じゃあ、翔くん！
今日も仕事頑張ってね～」

「ありがと・・・」

なんだか不可解過ぎて腑に落ちない。

そりゃあ、元から智くんは不可解でエキセントリックな人ではあったんだけど・・・。
ここ最近、急にその度合いが増してきたような気がする。

表面上はいつもの元気で無邪気な智くんなんだけど、何かが違う。

智くんは出勤しようとする俺を玄関先まで付いてきて、静かに微笑みながら見送ってくれた。

その笑顔を例えるなら、愛しい人を穏やかな光で照らす優しい月のようだった。