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「その秘密基地ってここから歩いて行くわけ？」
「うん、歩いて十五分くらいかな」
「そう・・・」
自転車を押しながら智くんに付いて行く。
夕べはあんなに怒っていたのに、今は楽しそうに鼻歌を歌ったり、スキップしたり・・・。
それはいつもの智くんだった。
「智くんって本当に不思議な人だよね」
「そうかな？」
「今まで智くんみたいな人に会ったことないよ」
「変わってるって言いたいんでしょ」
「いや、そういう訳じゃ・・・」
「別に気にしなくていいよ。
そういうの慣れてるし」
そして少し前を歩く智くんがクルッと後ろを振り返る。
「でもね、月子と潤は俺のこと変な目で見なかったし、特別扱いもしなかったんだよ。
あ、それから翔くんもね。
だから嬉しかったんだ〜」
「でも俺は智くんに隠れてコソコソと・・・」
「うん、だからもう嫌い」
無邪気な顔してキツイこと言うなあ。
「翔くんなんてもう大嫌いだよ」
智くんが笑顔でトドメの一言を放った。
「だよねえ・・・」
その言葉がまるでボディブローのようにジワジワ効いてきて辛い。
いっそのこと、一発でKOしてくれたほうがマシだ・・・。
そんなことを思いながら力なく項垂れて歩いた。
そして、それは一瞬の出来事だった。
差しかかったカーブ。
対向車線からスピードを上げて走って来たミニバン。
大きく湾曲しながら反対車線にはみ出してきた。
「翔くん、危ないっ！」
咄嗟に智くんが俺を庇うように自転車の前に立ちはだかる。
歩道を歩いていた俺たちに接近したミニバンは、キキーッと大きな音を立ててそのまま走り去って行った。
「智くん！大丈夫だった！？」
慌ててハンドルから手を離す。
その瞬間、自転車がガシャーンという耳障りな音と共に倒れた。
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作者名：なつ
| 作成日時：2015年12月13日 14時
