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今日一日の仕事を終え、智くんの待つ正面玄関前に行こうと渡り廊下を歩く。
窓から下を覗き込むと、いつも先に待っているはずの智くんのがいない。
もう着いていてもいい時間なのに・・・。
なんとなく胸騒ぎがして渡り廊下を走る。
急いで階段を駆け下りて正面玄関前の石畳広場に出た。
『今日も迎えに行くよ』
今朝、智くんははっきりそう言ったのに、そこに彼の姿はなかった。
不安と焦りでざわつく心を抑えながら自宅に電話をかけてみた。
でも智くんは電話に出ない。
もしかして家で昼寝して寝過ごしたのかな。
それとも面倒くさくなって来るのを止めたとか？
まさか途中で事故に遭ったりしてないよね！？
お願いだから電話に出てよ・・・。
コールの音を祈るような気持ちで聞いた。
「だーれだっ！！」
すると、いきなり背後から両目を隠され、急に視界が真っ暗になる。
思わず心臓が飛び出そうになった。
「だーれだっ！！」
えっと。
この声は・・・。
「智くんっ！？」
「ピンポーン」
目に当てられていた手を離され、クリアになった視界。
ビクビクしながら振り返ると・・・。
「智くん、あなた何してんのっ！！」
「え？“だーれだ”をしたんだけど？」
上機嫌の智くんが立っていた。
「ああ、かの有名な“だーれだ”ね。
恋人たちが待ち合わせの時にやったりする王道のラブシチュエーション的な、ね・・・・・ってあなた、俺のこと大嫌いって言ってたでしょうがっ！！」
「うん、嫌い」
もう絶句。
「相変わらず翔くんのノリツッコミはキレがあるね」
智くんは両手を口元に当ててクフクフ笑っている。
「それは良かった・・・」
なんなの、この人。
俺は朝からずっとどんな顔して会おうか悩んでたって言うのに・・・。
「それじゃあ、翔くん行こうか！」
「はい・・・」
今さらながらだけど、やっぱり智くんはエキセントリックな人だ。
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作者名：なつ
| 作成日時：2015年12月13日 14時
