月が微笑むから 3 【山】 (ページ43)

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「ただいま・・・」

玄関へ一歩足を踏み入れると、俺の帰りを待ち構えていたかのように智くんがリビングから飛び出して来た。

「翔くん、おかえりーーーーっ！」

そしていつものように飛び付く。
そんな彼を受け止めながら、笑ってみせた。

「まだ起きてたの？
先に寝てても良かったのに」

「うん、翔くん待ってた」

「そっか・・・ありがとう」

カニばさみ状態の智くんをそっと降ろす。
智くんは俺の様子がいつもと違うことに気付いたのか、首を傾げながら聞いた。

「翔くん、どうしたの？
飲み過ぎた？」

「ううん」

「疲れた？」

「ううん、そんなことないよ」

「それならいいんだけどさ～」

飲み過ぎたわけでも、疲れているわけでもないと言う俺にホッとしたような表情を見せ、智くんは踵を返してリビングに戻ろうとした。
咄嗟に彼の腕を掴む。

「え？何？」

智くんが何事かと振り返る。

「智くんに話があるんだ」

あれだけ松本さんに釘を刺されたのに、自分の中に留めておくことなんてもう無理なんだ。

「何？話って」

例えこれがパンドラの箱だったとしても、俺には知る権利があるなんて思ってしまって・・・。

「実は今日は松本さんと会ってたんだよ」

心の中で松本さんにごめんなさいと呟いて話を切り出した。

「潤・・・に？」

智くんは突然、松本さんの名前が出てきたことに一瞬目を丸くしたけど、すぐにいつもの無邪気な顔を俺に向けた。