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「あれぇ？
なんでこんなにたくさんリンゴがあるの？」
項垂れている俺の横を素通りして、智くんはテーブルの上に置いていたリンゴを持って不思議そうにしている。
もうすでに次の興味の対象はリンゴに移ったようだ。
「ああ・・・それね。
智くんのお見舞いにと思って買ってたんだけど、タイミングが合わなくて渡しそびれたヤツ」
「そうなの！？」
途端に智くんは嬉しそうな顔をした。
「食べる食べる！
翔くんのリンゴ食べたい」
いつも全く食に興味を示さない智くんがなぜだかリンゴを食べたいとせがむ。
半ば押し切られる形でリンゴの皮を剥き始めたのはいいんだけど・・・。
「なんなのそれ」
隣に立っている智くんが呆れたように俺の手元を見ている。
「だから今リンゴの皮剥いてるんでしょ」
「皮を剥いてるって言うより実を削ってるよね。
翔くん、下手くそだね」
「あのねえ！
失礼なこと言わないでくれる？
人にやらせといてその言いぐさはないでしょ」
「これだから翔くんは・・・」
翔くんはウンザリした顔をして俺からナイフとリンゴを取り上げると、スルスルといとも簡単に皮を剥き始めた。
「何それ！
あなた、どうしてそんなに上手なの？
料理人並みの上手さじゃないの！！」
「初めてやってみたけど、こんなの簡単だよ」
本当に！？
「智くんってさあ、本当に手先が器用だよね。
この前のクレーンゲームも上手だったしね」
「昔から手先は器用だよ、俺」
智くんは下唇を突き出しながら真剣な表情でリンゴと格闘している。
それは皮を剥いているというよりもむしろ・・・。
「ほら、出来た！」
それはまさかのキリン！
あの赤耳でおなじみの子どもだましのウサギリンゴではなく、今にも動き出しそうなキリン！！！
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作者名：なつ
| 作成日時：2015年12月13日 14時
