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智くん、無事に退院出来たんだね。
元気になったら、またデザインの仕事再開するんでしょ。
これからはきっとミスター・パーフェクトの松本さんが智くんに付いていてくれるから安心だよ。
俺、智くんのこと応援してるからさあ・・・頑張ってよ。
あの日、夜の公園で智くんに出会えて良かった。
短い間だったけどあなたと一緒に過ごせて本当に楽しかったよ。
一緒にスーパームーンを見に行こうって約束は果たせなかったけど・・・。
今までありがとう。
抱えていた紙袋の中を覗き込んだ。
真っ赤なリンゴが、土砂降りの雨の中ずっと俺のことを待ち続けてくれていた智くんの紅潮した頬っぺたと重なって胸がチクリと痛んだ。
「智くんは元気にしていますか？」
彼が退院してから三日が経った。
今日は午後から松本さんが打ち合わせに来ていて、それが終わると俺はその質問を投げた。
これまでは俺が聞かれていたことなのに今じゃ形勢逆転。
・・・いや、正直に言えばもうすでに松本さんに対して敗北感すら感じていた。
「元気にしてますよ。
無理してでも栄養のあるものを食べさせてます」
松本さんの顔が少々勝ち誇ったように見えたのは気のせいか？
「そうですか・・・」
「気になるんですか？」
「まあ・・・そうですね」
俯きながらそう言う俺に松本さんはふうっとため息を吐いて腕を組んだ。
「正直に言いますね。
智は体は元気です。
もう熱も咳ないし、食欲は少しずつだけど出てきました。
だけど・・・」
「だけど？」
「心は元気じゃないですね。
いつも塞ぎ込んでますよ」
「そうなんですか！？」
「智はまたデザイナーの仕事を始めるって言ってました。
多分それで最近また新聞を読み始めたんでしょうけど・・・あ、広告屋って世の中の動向や流行に敏感にアンテナ張ってないと仕事にならないんですよ。
でもあの様子じゃきっと無理ですね。
使い物にならないと思います」
「どうして智くんはそんなに塞ぎ込んでるですか？
せっかく仕事を再開しようって前向きになれたのに・・・」
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作者名：なつ
| 作成日時：2015年12月13日 14時
