月が微笑むから 3 【山】 (ページ3)

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それからすっかりクレーンゲームにハマってしまった智くん。

なんでこんなに上手いわけっ！？
本当に初心者なの、あなたは！！

隣で茫然と佇んでいる俺になんてお構いなしに次々と景品をゲットしていった。

「ゲーセンって超楽しいね。
今日は来て良かった！」

「それは良かったね・・・」

両手にぬいぐるみやおもちゃ、お菓子の詰め合わせ・・・などなどたくさんの戦利品を抱えて智くんはホクホクしている。

結局、俺は何も結果を残せなかったのに、脱力感だけはハンパなかった。

さて帰ろうと、二人で最寄り駅からマンションまで歩いていると、すでに外は暗く風は冷たい。

「智くん、寒くない？大丈夫？」

智くんは秘密基地から取ってきたというグレーのパーカーを着ていたけど、その下は半袖のTシャツだけだ。

「大丈夫～」

彼は気にする様子もなく、弾むような足取りで歩いている。
全然、疲れてなさそうだ。

寧ろ楽しそう。

「それならいいんだけどさ・・・」

そんな会話をしながら、ふと空を見上げる。

「あ、智くん、今日は半月だよ」

少し雲がかかった黄色い半月を指差した。

「あ、そだね・・・」

それなのに智くんは空をチラッと見ただけで「それにしてもさあ、今日見た映画は本当に傑作だったよね～」とすぐに話題を変えてしまったのだ。

「え？」

「だーかーら！
今日の映画、楽しかったよね。
また一緒に観に行こうね～」

「あ・・・うん、そうだね」

いつもなら俺が月の話を振ると、智くんは嬉しそうにその話題に飛び付くのに、今日は全然興味なさそうにスルー。
そんなに映画が面白かったのか、それなら誘って良かった・・・とその時はそう思っていた。

でもこの時のちょっとした違和感は、のちに俺の中で大きな罪悪感に変わってしまった。
もしここで智くんの変化に気付いていれば・・・。

呑気な俺がその変化に気付かされたのは、意外な人物から彼の正体を聞かされてからのことだった。