月が微笑むから 3 【山】 (ページ13)

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彼の素性を垣間見た翌日。

「智は元気にしてますか？」

打ち合わせが終わり、いつもの質問を松本さんに投げかけられ、俺は返答に困っていた。

「どうしたんですか？」

彼は口を噤む俺を睨むように凝視する。
その強い視線に促されるように俺は口を開いた。

「元気にはしてますよ・・・。
でも実は彼のことで松本さんにお聞きしたいことがあって」

「だから、俺から話すことは何もないって言ったでしょう？」

あなたもしつこい人だなあ、と小さく呟く。

「話せる範囲でいいんです。
今日、仕事が終わったら少し時間をもらえませんか？」

「でも話せることなんてほとんどないと思いますけど？」

「それでもいいです・・・」

粘る俺に根負けしたように松本さんは深いため息を吐いて「分かりましたよ」と渋々応じてくれた。

彼は資料を片付けると、「時間と場所は後からメールします」と言って帰って行った。

松本さんに指定されたのは駅前のカフェ。
待ち合わせの時刻より少し早めに到着できるように、時間を逆算して退庁した。

駅に着くと、ポツポツと雨が降ってきた。
少しでも雨と寒さを凌ごうと、コートの襟を立てて足早にカフェまで歩く。
店に入るとすでに松本さんは到着していて、コーヒーを飲んでいた。

「すみません、お待たせして」

声をかけながら向かいに座ると松本さんは長い足を組み直しながら俺に目を向ける。

「いえ、まだ待ち合わせの時間にはなってないんで気にしないで下さいよ」

そしてニコッと微笑んだ。

顔は笑っているのに、目の奥は全然笑ってなくて、いつも以上に威圧感があるような気がする。

正直言って、超怖い・・・。