月が微笑むから 3 【山】 (ページ12)

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確かにデザイナーだって自分で絵を描くかもしれないだろうから、彼の言っていたことはあながち嘘ではないんだけど・・・。
何か釈然としないものがあった。

それからしばらく検索で引っかかったページを片っ端から見ていった。

「すごいよ、智くん・・・」

彼のデザインした広告にはそのイメージに合わせてハッと息を呑むような躍動感があったりホッコリするような温かさがあったり・・・とにかく素人の俺でも目を見張るような凄さがあった。

しかも彼は数多くの広告賞で受賞していた。
そして必ず受賞作にはセットで松本さんの名前も。

松本さんが智くんのことを元パートナーと言っていたのはこういうことだったのか。
いつでも戻って来いだとか、一からやり直そうという松本さんの言葉にようやく合点がいった。

それにしてもだ。
こんなにすごい人なのにどうして智くんはグラフィックデザイナーを辞めてしまったんだろう。

きっとその理由を松本さんは知っているはずだ。

「翔くぅん・・・何してんの？」

その時、背後から智くんの声がした。

咄嗟にパソコンをパタンと閉じる。
そして何事もないような素振りで振り返った。

「智くん、起きちゃった？」

「うん」

彼は眠そうに目を擦っていた。

「ちょっと目が冴えちゃって。
何か面白い動画とかないかなあって見てただけだよ」

「うん」

「寝よっか」

「うん」

智くんをベッドに寝かせて、自分も隣に横になった。

「翔くん、おやすみ・・・」

「うん、おやすみ」

すぐに智くんはスースー寝息を立てた。
でも俺はなかなか寝付けなくて。

さっき見た彼がデザインした広告の数々が、まるでフラッシュバックするかのように鮮やかに頭の中を駆け巡った。