月が微笑むから 3 【山】 (ページ2)

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シネコンを出ると隣接してゲーセンがあるのに気付いた。

ゲーセンなんて久しく行ってないなと思って見ていると、智くんが目を輝かしながら中を覗き込み俺の袖を引っ張っている。

「どうしたの？」

「行きたい！」

「ゲーセン？」

「うん、俺、行ったことない！！」

「ええっ？そうなの？」

あんまりゲームなんて得意じゃない俺でも行ったことあるのに今どき珍しい。

「行ってみる？」

「翔くん、いいのっ！？」

「智くんが行きたいなら行こう」

「やった！」

智くんはさらに目をキラキラに輝かせて、早く早くと俺の手首を掴んで引っ張った。

「俺、これやってみたい！」

そして智くんにせがまれたのはクレーンゲーム。

「これってどうやんの？」

智くんはガラスケースを覗き込みながらキョトンとしている。

「え？知らないの？」

「うん、知らない」

まあ、ゲーセンに来たことがないくらいだから、クレーンゲームを知らなくてもしかたないのかもしれないが・・・。

「これはね・・・こうやるんだよ」

お手本を見せてやろうと、百円を入れる。
ボタンを押してアームを移動させるも・・・お目当てのぬいぐるみに掠ることさえなかった。

「翔くん、下手くそだね」

「あのねえ、これは言うほど簡単じゃないんだよ？」

その後、ムキになった俺が五回連続でやってみてもアームがぬいぐるみに接触することは一度もなく。

「もう！これだから翔くんは！！
全然取れないじゃん。俺がやる！！」

ウンザリした顔をして智くんが自分がやると言う。
だからそんなに簡単に取れないんだって！

・・・と思っていたのに。

「超簡単じゃん！
なんで全然取れないの？」

なんと智くんは一発でウサギのぬいぐるみを仕留めたのだった。

もうこの人は本当に何者なのさ。