独立独歩のえいりあん 2 (ページ4)

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ロックハート先生に絡まれる話ページ4

一人で意味もなく廊下を散歩しているときのことだった。

「おやおやおやおやこれはサクラバさん！」
「げっ」

紺青の生地に金色の派手な装飾を施したローブを翻したギルデロイ・ロックハート先生は、私を見つけるなり機敏な足取りでこちらへ向かってきた。

「こんなところで会うなんて奇遇ですねぇ、ええ、はい、分かっていますよ。奇遇と片付けた方が貴女には都合が良いとね」
「は、はぁ、ありがとう、ございます？」
「ふっふっふ、その淑やかで控えめな態度、実に好ましいですねぇ。もし私が女性のマナーに関する授業を受け持っていたらスリザリンに一点差し上げたいところです」
「それは、まあ、はい、ありがとうございます」

適当にあしらっているだけにも拘らず、ロックハート先生は眩しい真っ白な歯を見せて快活に笑っている。
一人で勝手に機嫌が良くなってお気楽なものだ。ある意味羨ましい。

「してサクラバさん。私に何か言うことがお有りで？」
「へ？」
「ん～？ほら、ありますでしょう？」
「えぇ…、笑顔が、輝いてます、ネ」

何のこっちゃと思ったが無理矢理褒め言葉を捻り出せば、お望みのものと違ったのか彼は「ノンノン」と人差し指を左右に振った。いや知らねーよ。

「ほら、よくご覧になって！」

ズイっと顔同士の距離を詰められ、思わず引き腰になってしまう。この人距離感バグってて教師としてどうかと思うのは私だけだろうか。
そんなことを思う私を他所に、先生はご自慢のブランドの髪をクルクルと指に巻き見せつけるように弄っている。

「あー、なんか髪が素敵ですね」

ほぼ棒読みにも拘らず、ロックハート先生はパッと顔色を変えてニッコリ笑ってみせた。どうやら正解らしい。

「分かりますか！そうです！今日は東洋から取り寄せた乙女椿のオイルを使ったのです。貴女の故郷ですよ、サクラバさん」
「それは、まあ、嬉しいことですね…」
「貴女はいつも私の変化に敏感で、そしてその度に讃えてくれます。えぇ、教師冥利につきます。それに私の授業では特異的に毎回熱心に教科書を読んでらっしゃるようだ。勤勉なことは何よりです」

教科書を盾にして寝てただけだよ、とは口が裂けても言えない。
私の体格的にあの教科書は頭を隠すには丁度いい大きさなのだ。

「どうです？日頃の貴女の頑張りを評価し、特別に私の研究室でハーブティーをご馳走します」
「え、や、それは…」
「お茶請けにマカロンもありますよ」
「行きます」

まあ嫌いではない。多分。