独立独歩のえいりあん 2 (ページ13)

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「はっはっは。まさかそんな噂がグリフィンドールの女子たちの間で出回ってるなんて思いもしなかったよ。彼女はよく目立つね」

「いや目立たせてるのアンタだから」というツッコミを3人はすんでのところで呑み込んだ。彼らが何とも言えない渋い顔をしているのをリーマスは気付いていない。

「安心しなさい。私は愛の妙薬を飲んでいないし、Aも飲ませたりはしないよ。あの子はそんな器用なことを出来る子ではないしね」
「でもそう仰る割には、Aのことに詳しくないですか？」

「私が何したって？」

そこにいるはずがない者の呑気な声が教室に響く。3人が弾かれたように振り向けば、Aが両手を後ろに組んで不思議そうに彼らを見ていた。彼女はリーマスから貰ったチョコを食べたのか、ほんのり甘い匂いを纏っている。

「ハーミィ、どうしたの？しかもみんな揃って」
「Aの方こそ！貴女、さっき戻ったんじゃ…」
「羽ペン忘れたから取りに来たんだよ」

「ほれ」とAが見せたのは風変わりな赤色のメッシュが羽に入った美しい羽ペンであった。確かにこれは彼女の物である。どうやら忘れ物をしたというのは本当のことらしい。

「相変わらず少し抜けてるね、君は」
「マルフォイに言われてやっと気付いたんですよー」

ハーマイオニーは確かに見た。あっはっはと呑気に笑うAを、リーマスが慈愛に満ちた眼差しで見下ろしているところを。
それは明らかに、他の生徒には向けないような視線であった。

「そんじゃ、私は戻るね。3人とも授業に遅れないようにね～」
「居眠り常習犯のサクラバに言われたくないよ」
「お黙りロン！」
「こらA、中指を友人に立てるんじゃない。下品だよ」
「あでっ！」

リーマスがAの額をパシッと軽く叩く。叩かれた本人は「暴力反対～」とブーイングを飛ばしたが、その表情は親しい友人に戯れるような愛らしさがどこかあった。
2人の間には15歳以上もの差があるはずなのに、今の彼女らには、その壁が無いようである。
まるで同級生のような青らしさと懐かしさが、そこには確かに存在していた。

「それじゃ今度こそばいばーい！」

嵐のように去っていったA。残された3人も、「授業に遅れないように」とリーマスによって半ば強引に教室から追い出された。

長い廊下を歩いている途中で、ハーマイオニーは1人考えた。

恋をしているのはAではない、ということを。