たらし ページ30
「Aちゃんてさ」
「はい」
「たらしだよね。自覚なしの」
「……ん？た、たらし？」
唐突に、目の前に座る中村さんにそう言われ、思わず固まってしまった。告げた本人はなんだか不貞腐れているような表情をしている。
たらしだなんてそんなことをした覚えは一度だってないためとても心外である。
「何ですか急に」
「だって色んな人と仲いいじゃん」
「えー、それ言ったら中村さんだって人たらしじゃないですか〜」
「俺のことはいいの！」
「ちょいと理不尽すぎやしませんか」
色んな女優さんや俳優さんとご飯に行ったり誘ったりしてるし、ふわふわした雰囲気とか色気のギャップとかその他諸々凄く素敵で世の女子をメロメロにしているのを分かって発言をしているのだろうかこの人は。
「菅田くんと仲いいじゃん」
「や、それはただの友達ですって…」
「吉沢くんとも仲いいじゃん何あれ」
「それも友達ですよ〜。年的にも弟みたいなもんじゃないですか…」
「2人とも国宝級イケメンじゃん。国宝両サイドに侍らせてるじゃん」
「侍ら…、これは酷い…」
2人とも年下だけどお互いに変に気を遣わないから楽で遊んだりしてるわけで、そんな下心ありきでいるなんてとんでもない。これはラブではなく、あくまでもライクだ。
完全にプライベートな遊びなのでネットに載せてみろ、匂わせ女として叩かれること間違いなしだ。怖くてそんなことできるわけがないし、2人だって私のことなど話しが合う男友達のようにしか思っていないだろう。
「最近だと一生さんとかも仲良いし…」
「いやあの人はドラマで一緒だったので前々から話とか普通にしてますよ」
「木村さんとだってこの前お出かけしてたじゃん」
「それは佳乃先輩のお子さんへのプレゼントをあげたいからで…」
「人たらし〜」
「もう…どうして拗ねてるんですか…」
眉を顰めて私を見る中村さん。何を言っても文句で返されるだろう。ああ言えばこう言う状態だ。
何故かのような話になったのか皆目見当がつかないため、どう返せば正解なのか言葉が見つからない。
「俺がさ、1番だと思ってたんだよね」
「なんのですか？」
「Aちゃんと芸能界で仲良い人」
中村さんのその言葉に少しドキッとくる。
人のことをどうこう言っているくせに中村さんだって十分人誑しでは…？
「中村さんも十分人たらしですよ…」
「だーかーらー、俺のことはいいのー」
「えぇ…」
「あ、今めんどくさいって思ったでしょ」
「いやそんなことは…」
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作者名：れいとーこ | 作成日時：2019年7月27日 0時
