来ちゃった ページ21
「これがね、お遊戯会の時のAなのよ」
「わぁ〜、可愛いですね」
「あらやだおばさんのことは褒めてくれないの？」
「お母さんも十分お綺麗ですよ」
「もう倫也さんたら〜」
あはは、うふふ。笑い合う母親と中村の二人の空気に、Aは思い切り苦虫を噛み潰したような表情をした。
「あ、これがね、七五三の時の」
「うわ、おめかしして可愛いですね〜」
「お母さん」
「あと、これは中学の入学式の時のよ」
「セーラー服だったんですね」
「お母さん」
「見て！これはね、高校でやった演劇祭の写真よ」
「王子役を演じたんですか〜。見たかったなぁ」
「お母さァァァん！！」
堪らなくなってAは某銀髪天然パーマ侍のように思い切り叫んだ。
「何ようるさいわね」
「うるさいわねじゃないよ！何でいるの！？」
「お母さんAの部屋の鍵持ってるでしょ？」
「連絡してよ！というか中村さんがなんでいるの！？」
バッ！と中村の方へ振り返ると、彼は悪びれもせず「えへへ」と女子顔負けの可愛らしい笑顔を浮かべながら説明した。
「いやぁ、Aちゃんの部屋の前で待ってたらお母さんが来て。それであげさせてもらいました」
「ねー」
「ねー」
「いや本人に断ってよ！！二人ともちゃんと連絡いれてくださいよ！」
ゼーハーと息を切らしながらAは二人を睨む。しかし、そんなこと御構い無しに彼らは会話を続けた。
「あ、そういえばねぇ、観たわよ、崖っぷちホテル」
「わっ、ありがとうございます〜」
「江口さん？だっけ？いやぁ、倫也さんたら本当にイケメンね〜」
「そう言っていただけると嬉しいです」
「うちの娘とあの中村倫也さんが共演してお母さん鼻が高いわ。もう近所でたくさん自慢しちゃったわよ〜」
「Aちゃんと共演できて僕もとても楽しかったです」
先輩が身内と話すことにこれほど得体の知れない羞恥心を抱くとは思わなかった。
え、お母さんご近所さんに言いふらしてんの？だから実家帰った時ご近所さんがこっちを見てニヤニヤしてるのか。とAは内心で母の情報拡散力に恐れ慄いた。
「あ、そういえばAが小さい頃にね〜」
「お母さんもうやめて！」
その後Aの母は、Aの幼少期の様子や黒歴史をひたすら中村に語り続けたのだった。
否応無しに語り続けられる彼女の黒歴史に、Aは半泣きにならざるを得なかった。
(Aちゃん王子役だったんだね〜)
(女子校だったんで)
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作者名：れいとーこ | 作成日時：2019年7月27日 0時
